20010615

アジアの街角から(6)

ベトナムの「こどもの家」

海援隊(海外展開企業等を支援するネットワーク組織隊)
代表幹事 牟田口 雄彦


 北京は、年間百万人ともいわれる人びとが地方から流入する都市である。そのほとんどが不法といわれる。牛の一種のヤクの頭を肩に背負った、いかにもチベット族と思われる人など、さまざまな人種が集まってくる。集まったからには、稼がなければ食べていけない。皆、職を求める。
 歩道の上に屋台が並んでいる場所がある。聞くと違法であるという。しかし、警察は捕まえない。なぜなら、彼らの中には、捕まえて留置場に入れてくれた方が宿と食事にありつけて喜ばしいと考えるほど、貧困な者も多いからともいわれる。こうなると、警察もお手上げである。
 中国の首都である北京へ来ると、空港から市内へ入る道路とその回りの並木のりっぱさとは対照的な、裏通りの貧困が見えてしまう。世界のどこの首都でもそうであろうが、富と貧困が隣り合わせなのが、都市、特に首都であるように思える。
 しかし、東京と北京では、やはり一億と十四億の人口を抱える国の首都との差、それこそケタ違いの貧困の差、生活の差があるように見える。これらの国民を豊かにしていく使命を託されている中国政府の苦労もさぞやと思われる。
 しかし、確実に市民は豊かになりつつあることを実感する。今回の私のガイド役の王さんは、先頃、十五万元で自動車を購入し、上海へハイウェーを使ってロングツアーに行くことを計画しているし、娘の中学一年生は、すしとマクドナルドが好物であるという。
 彼の夢は、現在タンス預金している六十五万円を日本に行って使うことだという。不思議なことに、彼は、日本語がすごく達者なのに日本に行ったことがないという。ビザが下りないのだという。十四億の民が日本に押し寄せることを恐れてか、日本の入国管理局は大変厳しいようである。
 しかし、王さんに言わせれば、そんなことはまずないという。日本に行く客、特に観光で行く人は、日本に行って働かなくてもよい層であるという。ただ、想像している日本の国土、風俗を自分の目で確かめたいのだという。例えば、本場日本のカラオケの歌い方やなぜ日本人は金もうけがうまいのか。
 われわれ日本人の認識では、歌い方は適当だし、金もうけは中国人の方がうまいと思うのだが、彼は、カラオケは日本が元祖だし、現実に今は日本人の方が金持ちだ。その理由は、日本人の耳は横に広がり、歌や金もうけの話を逃さないのだと真顔でいうのには驚いた。
 しかし、ことほど左様に日本に行けない彼らの空想は広がっているのである。インターネットの時代に情報は入るが、皮膚感覚の実感を得たいというのが、彼らの思いであろう。
 日本にいるとわからないが、北京の街角からながめてみると、政治的理由、金銭的理由があるだろうが、移動の自由が保証されている国は少ないことを感じる。あらためて、自由に話し、移動できる有り難さを噛(か)みしめるとともに、真の平和は、お互いの体温を感じるつきあいこそが基本であると思う。

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