20010425

イチローの受験体験記(上)
外には厳しいお役所仕事

失業者にはパソコン教育?

近江 一郎


 皆さん、ごぶさたしています。桜も咲き新たなスタートの季節を迎えましたね。私は元気に生きています。
 この間私は「学習」に取り組んでいました。その体験記をこの場をお借りして報告します。
 さて、旧労働省(現厚生労働省)が全国に展開している「雇用・能力開発機構」をご存知でしょうか。故小渕前首相が打ち出した「多くの国民にIT(情報技術)を」という掛け声とともに始まった、失業者に一定期間コンピュータを習熟させるための、新規の職業訓練といえる制度です。私は昨年十一月から今年の三月末まで五カ月にわたり、一日たりとも欠席はおろか遅刻さえせず通いました。
 この制度は雇用保険対象者以外にも、「働く意欲のある三十歳から六十歳までの人を対象」ということで自営業者にも門戸を開放しているものです。曲がりなりにも十五年あまり自営業者としてやってきた私も受講資格があったので、その機関へ足を運んだという次第です。希望するコースはもう埋まっており、残されていたコースはインテリアCAD(コンピュータを使った設計)というものだけでした。
 インテリアCADとは「インテリ」の人しか受講できないのかと思っていましたが、凡人である私でもOKとの担当者の言葉に勇気を持ち、説明を受けました。「パソコンがなくても結構。ただし遅刻、欠席だけは極力しないでほしい。また受講期間は収入を得る仕事はしない」という条件が提示されただけでした。
 担当者の「とにかく定員を早く埋め実績だけをあげたい」という姿勢だけがありありと見えてきます。私のほうも、どのコースであろうと非雇用保険対象者には審査によって通学一日につき六千五百円の奨励金が支給されるという目先に目がくらんでいたので、「ハイ、ハイ」と二つ返事で申請書を書きました。
 それから一カ月あまりたった十一月下旬、いよいよ晴れて何十年ぶりかに「生徒」となりました。定員三十人ですが二十九人の生徒が入学しました。委託された専門学校で受講するため、それぞれコースにより学校を振り分けられます。受講者は年齢層も幅広く、最年長は定年退職した六十一歳の男性、最年少は二十五歳の女性でした。
 また志望動機は純粋にインテリアCADを習得し将来の職業に生かそうと建設的に考えている人から、単に雇用保険が延長支給されるためだけに来ている人とさまざまであり、それは出欠と授業態度におのずから表れるものです。
 ここで問題なのは、前述の担当者の言葉にある「講習期間中に就業活動をしてはいけない」という条件です。失業中であり経済的に苦しい生活の中で、再就職を前提にこの講習に来ている人が大半なのに、一切の就業活動は認められないという矛盾。それに出欠管理が厳しく、欠席すればその理由の内容も厳しくチェックされます。まさに身内には甘くても「外部には厳しい」という、お上のいい加減さが見えてくるのです。(つづく)