20010405

書籍紹介 マハティール著「アジアから日本への伝言」
示唆に富む日本への警告

日本人よ 自分の足で立ち上がれ


 最近、マハティール・マレーシア首相の著書「アジアから日本への伝言」(二〇〇〇年十二月、毎日新聞社発行)を読んだ。
 一九九七年の通貨危機に際して、IMF(国際通貨基金)の管理下に入ることを拒否し、独自の通貨規制を行って困難を克服した経験、発展途上国への欧米の価値観の押しつけに対する批判や日本への注文など示唆に富んでいる。
 米英軍がまたイラクを爆撃し、死傷者を出した。他国の領空に勝手に飛行禁止区域を設けて、そこで「挑発行為を受けた」からだという。大国の身勝手さ丸出しだ。
 マハティールは「大国はある国のできごとを国民の権利に反するものと定義づけることができる。それゆえ大国は弱い国に内政干渉する際に多くの理屈づけができる。欧米は武力行使だけを会得しているように私たちには感じられる」と批判している。
 マハティールは「欧米は、欧米式のものの考え方に従わせるため貿易やメディアを使い、力で他国を従わせることはやめるべきだ」と主張した上で、米国が他国に対して人権問題を持ち出すことに触れて「米国の東アジア諸国の通貨への攻撃は何百万人もの人を失業させ、食料や医薬品、子どもたちのミルクを奪った」「イラクに対する制裁や爆撃はその結果、多くの子どもたちの命を奪った。これほどひどい人権侵害はない」と非難している。
 その米国に追随する日本だが、彼は日本をどう見ているか。
 マハティールは、日本を訪れた際にビニールシートで暮らす失業者に胸をつかれたという。経済問題を克服できない日本の現状について「米国が最も恩恵を受ける変動相場制を含め、西側システムにコミットし過ぎているからだ」と指摘する。
 「大企業は外国企業に買われ、外国企業は効率化のためにまず最初に手をつけるのが解雇と工場閉鎖である。これがビジネスを再生する解決法だと主張するかもしれないが、しかしそれは自分で自分の首をしめることに他ならない」と言う。
 かつて日本経済が発展した時に、アジアもまた多大な恩恵を受けたと彼は言い、アジアの中で大きな役割を果たしてほしいと願う彼の警告である。日本について触れた章の見出しは「日本人よ自分の足で立ち上がれ」だった。