20010325

課長のイジメに耐える毎日
 不況でノルマに四苦八苦

組合は俺たちのことを考えろ

郵便局員 森田 武弘


 俺は郵便局の保険外交員。雨の日も雪の日もバイクで外回りの毎日だ。
 この道三十年のベテランの俺でも、最近の不景気にはホトホトまいっている。俺が回っている地域には中小・零細の企業が立ち並び、景気のよい時はここの親父(社長)連中が契約に応じてくれていた。郵便局のユニフォームと赤いバイクが絶大な信用のシンボルで、「国の事業だから間違いない」と、二つ返事で契約してくれた。ところが今はまるでダメ。
 契約どころか解約が多くなっている状態だ。中小企業者だけでない。外交員の間では「四十代で子供が学校に行っている。家のローンがある。そんな所には近づくな」というのが合言葉になっている。「建設業者に近づくな」というのもある。一般の家庭でも解約が増えて外交員を泣かせている。
 というのも、俺たちの給与は基本給と歩合給で成り立っているからだ。それでもベテランの俺は、四苦八苦しながら月給を基本給と歩合給で何とか半々に維持しているが、人によっては契約が取れず、ほとんど基本給だけという人もいる。
 局には契約金額の目標があって、外交員にノルマが下される。「成績の悪い」人には課長の陰湿なイジメが待っている。「他の局へ行って歩いて回れ」と言う課長。外交員からバイクを取り上げたら仕事にならない。辞めろと言っているのだ。
 あるいは研修と称して一日中部屋に閉じこめる。何年も勤めている人に今さら「勉強」なんてものじゃない。課長は、外交員が部屋にいることが、どんなにつらいことかを知っているからこそやる。病気入院で長期に休んでいた人が治癒して「職場に出たい」と言ったら「出てこなくていい」と言う。
 こんな仕打ちを受けているのは何も経験の浅い若い人ではない。五十代の大人だ。見ていてかわいそうになる。定年を待たずに辞めていく人が多いのは、こういう実際があるからだ。外ではお客との対応で神経をすり減らし、局ではいじめられる。これではたまったもんじゃない。中には「集配の業務に替えてくれ」と頼む人もいるが、聞き入れられない。
 昔は(本当に昔になってしまった)、そんな課長を組合がつるしあげて反省をさせていた。先日、組合の役員が来てみんなの前で「郵政の危機だ」と話した。俺はカッときて「そんな話は課長から毎日聞かされている。現場で働いている俺たちの生活や労働条件をどうするか。考えて話をしろ」と言った。局では今後七年の間に俺たち外交員の三割の人員を削減するといっている。
 「郵政三事業の民営化」をぶっている政治家がいる。こんな政治家が現場で働く俺たちのことを考えていないのは当たり前だが、せめて組合はもう少しみんなのことを考えてほしい。そう思っているのは俺だけじゃないんだ。