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日本で生活している謝蘭芳を見ていて感じるのは、厳しい自然と生活環境の中で身につけたのだろうが、たくましさである。中国では「能吃苦」というが、苦労を食べてしまうのだ。 日本に来る前に両親が働いている玉門に行ったと書いたが、順調だと蘭州からバスで二十時間で着くそうだ。ところがこのときは途中でバスが故障して、三十時間もかかったという。付近に食事できるところもなく、空腹を抱えたままひたすら我慢する。それだけではない、故障したバスを捨ててしまう乗客も出て、人数が減った分バス代が割り増しになるというのだからたまらない。 彼女は今、午後の授業が終わった後、毎日一時間日本語学校の掃除をしている。千円だそうだ。 先生がアルバイトを募集すると三人が名乗り出た。そこで掃除の試合をして、採用を決めることになった。ほかの二人は蘭芳の働きぶりを見て、勝ち目はないとすぐにあきらめてしまった。ところが、負けた韓国人の友達がやってきて「彼は金に困ってるし、掃除は三年もやってきた。アルバイトを回してくれ」と頼んだそうだ。そのとき蘭芳は言った。「私は十年やってきた」 言ってはならないこともたまに言って笑う。僕の頭を見て「国では中央部長と言います。偉い人です」と言う。そのココロは「中央不長」(部と不は発音が同じ)、頭の真ん中の毛が伸びていない、つまりハゲのことだ。くぬー! 最後に、彼女に書いてもらった文章を紹介しよう。言葉遣いのおかしいところはあるし、内容も浅いと思われるかもしれない。しかし、ちょっと振り返ってみてほしい。僕たちが英語や中国語で何かまとまったことを書けと言われて、書けるだろうか。 複雑な思いを書くには語彙(ごい)がまだ足りないだろう。でも、これは独習と五カ月の立派な結果として記録しておきたい。( )内は僕の注と補ったもの。 * * * 日本の感受(印象) 私は日本に(来て)もうすぐ五か月になりますけれども、日本の生活と国の生活は私にとって全然違います。 |
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