20010215

日本アジアの街角から(2)

台湾流「伝統」の生かし方

海援隊(海外展開企業等を支援するネットワーク組織隊)
代表幹事 牟田口 雄彦


 先頃、台湾を日本の青年と歩いていると、若い女性に呼び止められた。何かと思って振り返ると、私の連れの青年と写真をいっしょにとらせてくれとの依頼である。
 私は、驚いて、まじまじと連れの彼の容姿を観察すると、背が高く瓜ざね顔であり、確かに私からみてもカッコいいのである。アジアの街角で確実に男女の仲も国際化していることを知らされた。
 海援隊幹事で公認会計士の三縄昭男先生が友人の息子(日本人)さんと台湾女性の仲人(なこうど)をお務めになった。
 結納から結婚式までの状況を聞くと、結納金は百数十万円を相手の銀行に振り込む、結婚式の日取りは風水で決定する。ご両人の豪華に着飾った結婚写真を先に撮影し、結婚式当日は、会場でその写真が来賓を出迎える。
 そして、当日、新郎が新婦を娶(めと)りにいく迎娶(インチュー)の儀式と、台湾の伝統と近代が交互に組み合わされ、見事なほどに演出されているということであった。
 台湾の女性を見初めた日本の男性に聞くと、台湾の女性は、「情」があるという。私が思うに、結婚式の迎娶の儀式に表現されるような「伝統的なもの」に裏打ちされて、台湾女性の「情」が強調されるのではなかろうか。逆に、近代的な面では、女性でも数億円の商談を一人でまとめてくるほど、そのビジネス風土に性差別はなくなっている。
 台湾の街角から日本をみると、「伝統」の「近代」への生かし方に、何かちぐはぐさが際立ってきているように見える。 日本は、今まで、会社を家庭として見立て、確固とした家族関係を職場に求めてきた。そして、そこにかつての家での男女の役割や家父長的なヒエラルキー(階層)を持ち込んできたのではなかろうか。
 そして、それは単純に先進諸国へ追いつくための経済成長には、非常にうまく適合してきた。しかし、そのことがかえって、現在男女の性差や会社組織の役職による封建的な役割の固定化をもたらし、近代のイノベーション(革新)に一番大切にされねばならぬ個人の尊重、能力の活用という面で遅れを招いているようにみえる。
 日本も、もう一度、日本の「伝統」を「近代」に反映させるルネッサンス運動を興し、職場での縛りを緩め、個人を「家族」や「地域(コミュニティ)」に組み直す作業が必要と思われる。そして、それは、遠回りのようではあるが、日本経済の活力を取り戻す「命の源」になると思われる。
 街角の結婚式から、近年、広東省を中心に電子産業の莫大な設備投資を着々と行い、世界的ビジネスモデルを確立しつつある台湾企業の強さの秘密がうかがえるような気がした。