20010215

有明海ノリの凶作で大打撃
 大衆行動こそ力なんだ

やむにやまれず海上デモ

福岡 田畑 光彦


 有明海沿岸で暮らす漁民が元旦、一月十三日に続き、同二十八日には千三百隻、六千人も諫早湾潮受け堤防の水門前に集結して、抗議の海上デモを行ったことは、新聞・テレビなどマスコミ報道で周知のことと思います。今では連日のようにマスコミでこの問題を取り上げています。
 有明海は、私にとっても子供のころからなれ親しんだところでもあります。こうした漁民の行動はよほどのことだと思い、二度目の行動直後、漁民に直接話を聞こうと有明漁連に連絡をとりました。ところが反応は以外で、「あれは組合員の自主的行動で十分把握していない。漁連として正式に話し合いの申し入れをしている」というものでした。また、直接行動に参加した漁民を紹介しほしいと言うと「諫早湾干拓事業事務所に直接聞かれたほうがわかるのではないですか」との返事が返ってきた。その後、漁業協同組合で紹介してくれた漁民と、やっとの思いで会うことができました。
 漁民は、「自分とところでは、例年の三〇%程度で、いつもならこの時期は忙しいのだが今年はひまでたまらない。親類に何かアルバイトはないか探してほしいと依頼している」と言ってました。
 また、「若手組合員も仕事を探してほしいとの要求が多くある。こんなに凶作では機械代も払えない。ノリの収穫を見込んで設備投資しているのにたまらない。経費も一千万円から千三百万円ほどの設備投資をしている。特に漁業関係の資材や機械(乾燥機など)は、農業関係と比較しても特殊なため価格が三倍にもなる」ということだった。
 諫早湾の干拓事業所の影響については、「それだけが影響しているとは思わないが長年(二十数年)やっているので感覚的にもわかる。ここ数年、海流が変わったし、ノリの収穫も年々減少してきているのが実態だ。海面も上がったので網を張るための竿も長くしなければならず、それだけ設備投資もしなければならなくなった」などなど。
 また、地域経済への影響についても「機械業者も地元の業者が七〇%を占めており、業者も大変ではないか? 業者と生産者も長い付き合いがあって、不作でも支払いは支払い、とはなかなか割り切っていえないというのが実態だ。おれたちが行動しなければ、上の人たちは動かない」と気持ちを語ってくれました。最後にできるだけ多くの人に実態を知ってほしいと訴え、多くの人を紹介してくれました。
 漁民の話を聞いて、今回の行動がやむにやまれずの行動で、その要求も当然だと思いました。また、最後に漁民が「おれたちが行動しなければ上の人たちは動かない」と言ったことが印象的でした。
 こうした漁民の行動によって、いくらか対策が打たれようとしているようですが、いくら低利の融資ができても、意味がない。融資を受けようにも返すメドがなければどうしようもありません。漁民のもっとも切実な要求は、これから先もこの有明海で生活できるかどうかだと思います。漁民たちが言っているように時間はあまりないと思います。
 諫早湾の干拓事業の影響は、何年もの間、懸念され続けてきましが、事態は何も変化しなかったのが実際でした。しかし、今回の漁民の行動によっていくらか変化しつつあるように思います。今回漁民が示してくれたように、直接行動することによってしか事態は変化しないことを改めて感じているところです。