20001205


露骨な選別に怒り沸騰
採用は1割 、賃金は半分に

定年延長はインチキだ

自動車労働者 青山 元


 「『豊かな経験』と『高い技能』を活かして六十歳以降も意欲をもって働く」といううたい文句で始められようとしている定年延長制度が職場で話題となっている。年金制度が改悪され、労働者が年金受給年齢に達するまでの生活を脅かされる事態に陥り、労働組合もやっと重い腰を上げたようだが…。
 詰所でAさんが組合の機関紙や会社の労務ニュースを真剣に読んでいる。何だろうと後ろからのぞいてみると「六十歳代後半の働き方に関する話し合い」というタイトルの部分を指さし、「これはどういう意味なんだろう。おれたちはどうなるんだろう」と言う。そういえば商業新聞にも載っていたが、会社からも組合からも何の説明もない。
 ちょうど職場委員のS班長が来たので「おいS、定年延長の件をみんなに説明せよ」と要求する。ところが、そのS班長の返答に私はあきれ返った。「青山さんにはまだ先の話だから関係ないでしょ。退職一年前の人には人事から個別に説明があるから私が説明する必要はない」と抜かすのだ。「お前はそれでも職場委員か、これは組合員全体の問題なんだぞ、関係ないとは何だ!」とやり返すと、すっ飛んでいった。
 翌日、突然職場会が開かれて評議員のT組長より「定年延長制度」の説明があった。その内容は組合ニュースの棒読みであったが、私や年配の労働者の質問とT組長のもっていた「虎の巻」から、この「定年延長制度」がいかにインチキなものであるかが組合員の前に明確となった。
 そもそも、定年延長といいながら実質は露骨で差別的な労働者選別制度である。六十歳以降も会社に雇用されるのは「体力試験を実施」「人事部で最終決定」とあり、まず人事が絶対的な権限をもって選別し、しかも対象者は資格Aレベル取得者、つまり組長級以上に限るというのだ。
 何のことはない、会社の言いなりになる健康なやつだけ雇うというわけだ。おまけに当面は退職者の一〇パーセント程度しか雇わず、賃金はフル労働でも従来の半分程度だ。
 これでは、会社による労働者の選別であり、労働者同士を争わせて働かせる労務管理に他ならない。またていのいい低賃金労働者の育成である。「これはインチキ定年延長だ! 希望する全員を無条件で雇用するよう会社に申し入れるべきだ!」と主張するが、T組長からは一言も返答はなかった。
 会社はバブル期以上の大増産である。数千人の季節工を雇い、シェア争いでもライバル社に大きく水をあけ、絶好調である。しかし会社は「大企業の賃金は社会的制約を受ける」といって、労働者を低賃金でこき使っているのだ。 今後の老齢化社会に向けての定年延長のモデルケースを構築すべき大企業の社会的責任を放棄したばかりでなく、その露骨な資本主義的な手法でなお労働者を搾取し続けようとしているのだ。
 敵の攻撃は、ますます強まるばかりだが、労働者の怒りはさらに強く、さらに激しくなるばかりである。


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