20001115


許せない! 安全宣言
今も悪夢のような苦しみ

「杉並病」は終わっていない

東京・斎藤 恵子


  十月二十四日、杉並区長は「杉並中継所」(不燃ゴミの圧縮施設)の排気からは健康に影響があるほどの化学物質は出ておらず、中継所は安全であると発表しました。ほんとうに安全な施設なのかどうか、皆さんに私たちの実情を知っていただきたいと思います。
 私の住む東京都杉並区井草に中継所がつくられてから四年半が経過しました。この間、私たち住民は、この中継所から排出される化学物質による健康被害にほんとうに苦しんできました。
 私自身、中継所のすぐ近所に住んでいるため、当初から非常に健康を害し、湿疹(しっしん)やせきから始まって、息が苦しく、目は涙がとまらず、内臓がねじれるように痛む、さらには環境ホルモンの影響か乳房がどんどん肥大化し、一方では男性のようなひげが生えてくるなど、悪夢のような被害に死にたいほど苦しんできました。この四年間、一日も心の安まることはありませんでした。
 家族も近所の人も個人差はあれ、同じような被害に苦しんでいます。私は北里大学病院で「化学物質過敏症」であるとの診断を受けました。ご近所の多くの方々が同じ診断を受けています(最近問題になっている「シックハウス症候群」も同じ化学物質過敏症です)。
 こうした被害は、今も何ひとつ変わっていないばかりか、広がり続け、いっそう重症化しています。
 今年八月、猛暑の中を、私たちは周辺地域の皆さんに対して、アンケート調査を行いました。二千通ほど配った中で約一割の方が回答して下さいましたが、とてもひどい症状の方が多かったのです。
 流産した女性や、ガンを発病した方も激増しています。ある被害者の女性は、以前から具合が悪かったため昨年仕事も辞めたが、症状は悪くなる一方です。今年五月にはついに体が動かなくなり、入院しましたが原因がまったく不明。治療もしてもらえず、今も症状ははかばかしく好転していません。
 住民がこれほど苦しんでいるのだから、区はなんとかしてくれるのではないかと思い、昨年当選した区長に私たちは望みをかけてきました。実際、昨年五月に区が行った健康調査では、中継所と周辺の健康被害の関連性を認めていました。
 しかし、その後、東京都の委員会が健康被害の原因は開所当初の硫化水素の流出による一時的なものと結論づけ、今回の区長の「現在の中継所は安全」との発表に至ったのです。私たち被害者の声は踏みにじられました。現にこれだけの健康被害があるのに、それを知りながら安全宣言をするなんて、人間として許せない! 裏切られた思いでいっぱいです。
 「杉並病」は終わっていません。とにかく、杉並中継所を止めなければなりません。このまま放置すれば、被害はどんどん広がるばかりです。皆様のご理解とご支援をお願いいたします。
 最後に、同じく被害者である伊田美代子さんの短歌をご紹介させていただきます。


杉並中継所安全宣言によせて  
伊田 美代子

中継所安全なりと発表す欠陥改善行わずして
地主らはもう安全と部屋を貸す人間軽視の行政に怒り
草木傷み生命蝕む毒ガスは時代を越えて流れゆくなり
大声で嘘つき野郎とさけびたし責任逃れの安全宣言
信頼し選びし人の裏切りか政治に届け真実の声


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