20001025


公務員もゼロベア時代
スト権取り戻すときだ

労働者の誇りかけ闘おう

地方公務員 飯野 清二


 私は、市役所で働いています。十月十五日「公務員にスト権を」という新聞の見出しを見て「やっと組合も本気になったのか」と感心していたら、内容はまったく違いました。それは自民党の野中幹事長に関する報道で、「公務員にスト権を与えるが、その代わりに人勧制度など公務員制度を根本的に見直す」という発言でした。
 何年も前ですが、私が組合役員になったとき、先輩が話をしてくれたことを思い出しました。「公務員労働者が人勧体制のワクに縛られているが、昔からそうだったのではない。敗戦直後は公務員労働者も民間の労働者と共に闘い、労働者の権利を一つひとつかち取ってきたんだ。資本家は体制的危機の中で高揚した労働運動を押さえ込もうと、占領軍の銃剣で二・一ストを中止させ、公務員のスト権を奪ったんだ。『人勧体制をうち破るのは君たちの時代の仕事かな』」と穏やかに語ってくれました。
 資本家を助け、社会の安全弁となってきた日本的労使関係は石油ショックを乗り切り、世界からも注目されたようです。しかし、金融グローバル化が進む今、資本家は「個々の競争力向上による日本企業の再生」と称して、雇用・人事戦略に徹底した市場原理を導入しています。終身雇用と年功序列賃金がうち捨てられ、「日本的労使関係」が破たんしています。公務員労働者も例外ではありません。
 今年の自治労大会では「国際間移動が激化するなかで、日本型年功序列賃金制度との矛盾が表面化している」「企業の盛衰が激しくなると終身雇用が揺らぎ、企業間の移動が増える。この中では年功型賃金は不利である」という本部の発言に対して、各地の代議員からは「能力・実績主義の導入は労働者間の競争をあおり、いっそうの格差を拡大するものだ」「公務員の職場実体に実績主義はなじまない。新たな差別と混乱を職場に持ち込み、最終的に労働組合の解体につながるものだ」という意見が続出しました。
そうはいっても人勧ゼロベアの時代、若い人の中から「差別賃金」容認の声が聞かれる実態も一部にあります。労働組合の存在が問われる時代となりましたが、私たちの組合の大会で、敵の攻撃が厳しい部門の支部長が「労働者の誇り、この言葉に背中を押されて役員になった。大きい声が支配する職場ですが、小さい声、声にならない声を代弁して、明るい元気な支部をつくっていきたい」と力強く発言し、感動的でした。
 依存すべき第三者機関が、ゼロベアを勧告する「擬制の終焉(しゅうえん)」を迎えています。公務員労働者の自己決定権を取り戻す、先輩が期待を寄せていた「人勧体制打破」と攻勢をかけたいものです。 


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