20001015


最新設備で目が回る忙しさ
大資本家だけが甘い汁

労働者をバカにするな

自動車工場労働者 仲村 勇治


 俺たちのラインは最新鋭の設備で(ロボットの占める割合が工場内で最も高い)、八時間で四百十五台、約一分一台のペースで車をつくる。ほんとに目が回る忙しさだ。生産台数が増えれば人を入れるが、少なくなると人を削る。今も昔も、有給休暇は完全消化できる状態になっていない。入社から現在までほとんどの人が、消化できない有休の垂れ流し状態である。もっと人を入れろ!
 従業員数八九年六万人、九三年五万三千人、九六年四万八千人、九九年三万七千四百七十人。仕事は同じことのくり返しで「ネジ締めるだけ、やりがいなんてぜんぜんない」。そのはけ口がギャンブルだったり、酒だったりという具合である。
 ギャンブルは負け飽きたし、たまに読書もするようになった。最近始めたパソコンでもやろうと思って、チャット(インターネットを使ったリアルタイムの会話)をクリックすると、全国の人と通信ができるのにびっくり。プロフィールまである。八十歳のばあちゃんかもしれんが、二十五歳だと書いてある。それにしても、「もっとゆっくりしたいよなあ」と最近つくづく思う。
 有給休暇は四十日もあるのに、消化できるのは毎年十二日くらい。このままでは一年、いや一生消化不良ということになりかねない。サービス残業をやめて年休の完全取得で約百万人の雇用が創出されるというが……。
 世間を見れば、戦後最悪の失業率で失業者三百四十万人。自己破産十二万件、生活保護受給者一千万人突破と国民生活は深刻である。また、昨年一年間の自殺者は三万三千四百四十八人で過去最悪、原因は経済・生活問題が健康問題についで三割を占めたという、長引く不況下で負債や事業不振などが中高年を自殺に追い込んでいるようだと…(日経)。
 また、厚生年金の支給開始も遅れてくるが金額も減ってくる。まだ二十歳だからあまり気にならないが、六十五歳からの支給で額も少なくなったらどうしよう。現在六十歳定年だが、その後どうなる?という不安もある。ゆとりがない、有休も取れない、給料も能力給になったら心配だ。
 グローバル化で顕著になったのが工場閉鎖だ。米国マイクロソフト社のビル・ゲイツ会長、ブルネイ国王、ウォールトンファミリーの三者の資産を合わせると最貧国(四十八カ国、六億人)のGDP合計を上回るとの試算がある。
 国際競争の中で、国民は犠牲にされる。今日の新聞に「フランス・ルノーが中国進出」とある(中国の高卒者初任給六千円だという)。「ほんの一部だけが甘い汁吸うな! 労働者をバカにするな!」と叫びたい思いだ。
 三菱のリコール隠し、米国ブリジストンタイヤの欠陥タイヤ、雪印乳業、JCOの臨界前事故など、数え上げれば限りがない。世界的な大競争の中、企業の利益一辺倒のあり方が原因だと思う。いま資本主義のウミが一度に吹き出しているようだ。さあ、ウミをつぶして治療を始めよう。 


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