20001005


相つぐ有名ホテルの閉鎖

「長崎のよさ」壊す都市開発

長崎市 速水 信夫


 日蘭交流四百周年記念事業が全県的に展開されている中、長崎市の観光拠点であるグラバー園近くにある全国チェーンの「長崎東急ホテル」とJR長崎駅近くの老舗(しにせ)の「長崎観光ホテル秀明館」がそろって、十一月に閉鎖することになった。 いずれも長崎を代表するような好立地にある有名ホテルである。また、去る七月にはホテルあじさいチェーンの四つのホテルが突然閉鎖されたばかりであり、相つぐホテルの閉鎖(事実上の倒産)は業界関係者はもちろん、長崎県民、市民には大きな衝撃として映ったのである。次はどこが閉鎖に追い込まれるか、などとうわさされるほどである。
 今、ホテル業界は過度の競争状態にあり、参入、閉鎖(倒産)が全国的に発生しているが、それにしてもここに来て、一気にといった感がある。長崎市の観光がハウステンボスの開業で、宿泊客の流れが変わって通過型になり、各ホテルの客室稼働率が軒並み減少傾向になっているのも事実である。しかしながら、新規参入のハウステンボスも開業以来の赤字続きで、最近抜本的な再建計画が発表されたばかりである。
 最近の観光は団体客に代わって個人、グループ客が主流になっている。観光客は観光地に「癒(いや)し」を求めに行く。その「癒し」に必要なものは雄大な自然や、ほかにないような個性ある町並み、そしてそこに漂う生活感あふれる人びとの生きざま、伝統など、さまざまな要素があると考えられる。長崎の場合は、これらのすばらしい要素をもともと持ちあわせていたにもかかわらず、壊してきたように思えてならない。短視眼的にイベントや各種施設の建設による呼び込みは、まさに一過性に終わっていることが多かった。
 長崎はもともと「鶴の港」として栄え、海(港)があり、海近くまで迫る山々、山の麓(ふもと)とわずかな平地に人びとが暮らす長崎独特の景観と生活風土をもっていた。それが他県から来た人びとには異質で個性的な町に感じられてきたのである。しかし、長崎も昔からの旅館に代わって大型高層ホテルが建つようになり、ますます競争が激しくなってきたし、無計画とも思われる高層マンションや海岸の埋め立てによって、長崎独特の景観が失われてきたのである。
 経済発展と魅力ある町づくりは長崎の大きな課題であるが、目先の動きにとらわれ、イベントも含め画一化され、本当の「長崎のよさ」を見失ってきたように思える。長崎の海岸線には「鶴」の面影は今はほとんどない。
 これからは長期的な視野で長崎の都市計画(町づくり)に取り組まなければ、長崎を訪れる人はますます減っていくことだろう。
 


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