20001005


−障害者と日本社会−

私の夢

団体職員 福沢和美


 私は、脳性まひという障害で車いすを使い、暮らしています。「自立生活センター」という所で、障害をもった方の生活相談、バリアフリー、介護制度などの施策への提言をしている団体の職員をしています。
 私は二十年ほど前から、このような活動に携わってきました。その頃は、社会資源も乏しく、バリアフリーという言葉すらありませんでした。その中で友人や仲間といっしょに、ボランティアを探し、街頭でカンパを募り、駅の階段では通行する方に車いすを上げてもらいながら活動してきました。
 現在では、公的扶助などの諸制度もそれなりに充実し、バリアフリーの建物や駅も増えています。しかし近頃、これらが充実すればするほど、それに合わせた生活を強いられ、私たちの生活が細かく分化させられ、トータルとしての社会参加というか社会生活がしにくい情勢だと考えています。
 たとえば、先日のことですがいつも利用している駅の次の駅にエレベーターがつきました。そちらが使いやすいから、次の駅を使ったらどうかとすすめられたりします。
 また、介護保険においても、幾種類かのメニューの中からサービスを選ばなくてはなりません。それを拒むと「こんなにメニューがあるのに」と、メニューから選ばない人は「わがまま」「生意気」のレッテルを張られます。
 現在の労働情勢でも、リストラ、過労死など問題はありますが、障害者の雇用はさらに厳しいものがあります。皆さんには働くことは毎日当たり前のことだと思いますが、障害者は働きたくても、会社はなかなか雇ってはくれません。それでもやっぱり普通の会社で健常者の中に入って働くのが、私の夢です。
 私は、その当たり前の中に、毎日、障害者や高齢者を含めたさまざまな人びとが通勤し、同じ環境の中で折り合いを見つけながら働き、生活していけるような社会が、こんな時だからこそ必要ではないかと思います。そのことによって、逆に現在の企業のあり方、労働のあり方も見直されていくのではないかと思っています。
 私の夢、それは障害の有無や程度、年齢、住んでいる地域などによって分けられることなく、皆さんといっしょの環境で暮らせる社会の実現です。
 そのために毎日、緊張する手や足を押さえながら活動しています。 


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