20000825


50度の工場で「ゆでダコ」状態

ついにクーラーを付けさせる

製パン工場労働者 坂口 哲夫


 中学を卒業してパン工場で働いて二十年以上になります。
 最初は製造部門でパンをつくっていました。二十歳になった区切りにと運転免許を取りましたが、とたんに営業に回されました。
 営業といってもパン屋の場合は、商店やコンビニなどへの配達です。朝四時半に会社に行き、仕分けの人が用意したパンを積み込んで、毎日決まったコースを走ります。午後二時くらいに会社に戻り、明日の注文伝票を書いて三時頃に帰ります。
 昔は正月の三が日は休めましたが、最近はコンビニや大型店が正月も営業しているために休めなくなりました。体の調子が悪かったり、用事があって休む時は、会社は代替えの運転手を用意していないため、ふだんは事務をやっている営業の人が配達をします。その人の都合が悪いと、休みたくても休めないことがたびたびでした。
 三年くらい前に胃かいようで入院しました。医者は、はっきりした原因が分からず「ストレスだろう」と言っていましたが、確かにきついのをがまんして働いていた時期でした。
 退院してから、営業では体がもたないと思ったので、会社に別な部門に回してほしいと頼みました。最初は会社も渋っていましたが、「また病気になっても困るしなあ」と言って、古巣の製造部門にかわりました。
 本当は、昼勤務の仕分けを希望したのですが、だめでした。製造部門のきつさも分かっていたからです。とにかく暑い職場で、夏には五十度近くになりました。三交替(夜は男だけ)で仕事をしていますが、夜でも涼しくならず、みんなこの暑さにまいってしまいます。「ゆでダコだ」がみんなの口グセです。
 職場で話し合って、私が代表で会社に「暑くてたまらんからクーラーを付けてくれ」と言いました。会社はその場では「分かった、分かった」と言いますが、いつまでたっても付けてくれません。そこで私は、組合に「会社に言ってくれ」と頼みました。「会社にも都合があるんだろう」という、いい加減な組合ですが、職場のみんなから突き上げられて、やっと動き出しました。今年の七月にクーラーが付きました。五十度の職場が四十度になりました。

働きやすい職場にしたい
 
 これまで何度か会社を辞めて別な仕事につこうかと思ったことがあります。ところがそのうち、今のような景気で、辞めても行く先がないと思うようになりました。営業の人の出入りは激しいものがあります。仕事上、他の会社の人とのつき合いもあって情報にも詳しく、どこの会社はどうだとかいつも話題になっているようです。
 私も営業をしていた経験から、少しでも待遇のよいところをさがすのは当然だとも思います。問題は、うちの会社が他の会社に負けないような待遇をしないからです。組合にもそういう話をしますが、まったくやる気がなく、職場の人も信用していません。
 先日の衆議院選挙では、会社から頼まれて無所属(保守)の人を応援していました。あまり評判のよくない人で、みんなはあきれていました。当然投票に行くわけもなく、無関心層とマスコミは言いますが、こういう事情もあるのです。
 何とか暑い夏も終わりに近づいて少しホッとしています。働きやすい職場環境にするにはまだまだいろんなことがありますが、少しでも力になれればと思っています。 


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