20000805


アジアに生きる若者たち

極東リーグを夢見るサッカー少年(8)

海援隊(海外展開企業等を支援するネットワーク組織隊)
代表幹事 牟田口 雄彦


 中国は、サッカーが盛んである。というと不思議に思われる人もいるかもしれない。なぜなら、十三億人といわれる国民を要しながらサッカーの国際レベルは、低いものだからである。
 サッカーは、戦争にたとえられる。国際的にさまざまな戦略や戦術が試され、常にサッカー先進国は、勝つために人材を育成し、世界中からの情報を取り寄せている。  サッカーのタレントは、ブラジルでは小さな頃から集められる。そして、育てられ、世界の市場に送られるシステムが存する。エージェントと呼ばれる代理人や組織が存在し、そういったタレントの売買の契約料などで飯を食べている。たとえば、サッカーのイタリアリーグのブラジル人スーパースターのロナウドは、今や数十億円の価値をもつスターに育っている。
 「このようなタレントは、中国にもきっといる」と思ったところから、島義晃君(十九歳)は、留学を決意した。彼は、サッカー少年であったが、プロのサッカー選手にはなれなかった。しかし、サッカーに携わりたい気持ちが強いことと、自分の祖父が中国の鞍山に勤務していたことから中国のサッカーに興味をもち、上海に行くことを決心した。
 中国のサッカー状況を、取り合えず視察することに決めたのだった。彼は、現在、語学を学びながら上海のオリンピック委員会に人脈を得ようと試みている。そして、将来は、韓国、中国、日本を入れた極東リーグを誕生させることを夢見ている。
 日本にも、世界的視野からアジアを見ることができる若者が出現している。よくスポーツに国境はないといわれるが、サッカー選手のタレント性を素直に見るときに、優れたプレーができる選手を中国で見てみたい。本当に十億を超える人口がいる中国にそのような選手はいないのか。いないとすれば、なぜいないのか。という疑問をもち、そしてその回答を得ようと行動する。このような好奇心と行動力をもつ若者が日本にも出現している。
 彼に聞くと中国は楽しいという。なぜと聞くと、人が自由に何のこだわりもなく、活動しているからと答えが返ってきた。たとえば、スパイクを履いてコンクリートの上でサッカーをするやつがいると彼は笑って答えてくれた。その自由さがいいという。
 何かこの答えの中にギチギチと島国日本の箱に詰められた日本の少年たちの叫びも聞こえてきそうである。お金も偽札があるし、その偽札が通用する場所もあると彼は言う。彼は、島国日本では決して考えられないことが、大陸中国では通用することを学んだようだ。
 彼は、祖父が言った「大陸は広いぞ」という言葉をときどき思い出すそうだ。それは、彼のイメージする世界が、まさに日本列島から中国大陸そしてアジアへ拡大していることを、十分に感じさせる言葉であった。
 


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