20000725


休暇とったらボーナスカット

頭に来るけど辞められず

建設労働者 宮浦 芳雄


 建設業の仕事について二十年になる。最初は大工の見習いから入って、今は建設工事会社の現場監督をしている。住宅を建設し、それを売る会社だ。会社といっても、社長と社長の妻が専務で、娘二人が事務員という、実質は家族でやっている。
 見習いの頃は日給で、今は月給制になった。仕事を覚えてから、一時は個人で会社を名乗ってやっていたこともあったが、五、六年前頃から仕事がぱたっとなくなり、会社勤めをすることになった。
 この業界はやはり景気の良し悪しが左右する。社長は「いいものをつくれば売れる」と言うが、以前のようにはさばけない。最近売れた二件の買い手は、国家公務員と学校の教師だ。土地の値段が下がり、家の値段が安くなったといっても、一般庶民はそう簡単に買えない。
 今、一番苦労しているのは、社長と下請け現場の大工との間で板ばさみになっていることだ。最初は設計図通りに仕事が始まるが、途中で変更される。それも社長の腹ひとつで。現場からすれば、全体の段取りを考えたり、建設に見合った材料を準備するが、それが無駄になったりする。さらには、一度終わったところに直しが入る。当然工期も遅れる。
 大工さんだけでなく、電気工事の人にも影響がでる。当然、現場から俺のところに文句が出てくる。「直し代をよこせ」とも言われる。
 俺から見れば会社が悪いんだが、社長は「もっと現場をびしっとしめろ」と言う。気持ちは現場の人たちと同じだが、立場上は社長の言い分を通さないといけない。
 四、五年前から工事価格が下がりはじめたことも下請けにとっては厳しい。その上に支払いの段階で会社は値切る。社長は「支払う方が強い」と平気で言う。
 大工さんにしてみれば、一つの現場が終われば一週間や二週間も次の仕事がないわけで、やった仕事についてきちんと支払えと思うのは当然だろう。
 俺のことでいえば、一応九時から六時という勤務時間になっているが、この時間で帰ったためしがない。九時、十時が日常になっている。それでも残業代はなし。水曜日が会社の定休日になっているが、下請けは動いている。なにかあると電話が入って出かけなくてはならない。
 昨年のことだが、一級建築士の免許を取るために合わせて二週間休んだ(有給休暇がないから)。そしたら、この休みを理由にボーナスが全額カットされた。さすがに俺も頭にきて文句を言ったが、社長は、辞めてもいいよという態度だった。家族もいるし辞めるわけにはいかない。
 こうしたいい加減さは、多かれ少なかれ他の会社にもある。業界特有かもしれないが、そうだとしたら、業界で気持ちの通じ合う仲間をつくるしかない。今はそんな気持ちで地道にやっている。 


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