20000715


コムスンでヘルパー大量解雇

介護で利益上がらず撤退

福祉は金もうけにあらず

福祉施設労働者 岡部 美也子


 介護保険がスタートして三カ月が過ぎました。目が回るように忙しかったスタート時に比べれば、いくらかは落ち着いてきたように思います。 私の職場でも、コンピュータがこなせる事務職員の増員を強く要求しました。やっと一人増員し、なんとか実務上もこなしてきました。
 やればやるほど、この制度の問題点がいろいろ出てきています。最近、あの介護サービス大手のコムスンが大量の解雇、営業拠点の大幅な統廃合を行うという報道がなされていました。私のところにも以前営業にきていたのですが、最近来ないので、どうなったかと思います。代わりにといえば変ですが、やはり大手の介護サービス会社が営業の拠点をつくって「顧客」獲得に乗り出しています。
 こうした大手業者はマスコミなどで派手に宣伝をしているので、正直言って、利用者からは「金もうけ」というように見られ、これまでの「福祉」とはなじまない印象をもたれていることも否めません。それにしても家事援助などは、報酬額も低いし、顧客が少ない地方などでは、とても採算が合うようなものではありません。こうしたことを保険ベースでやろうということがそもそも無理な話で、国の福祉政策の基本的な方向の問題なのです。
 私の県では、サービスを提供する「事業者」に支払われた介護報酬の四月分の額は、当初見込み額の七九・一%だったことが先日報道されました。近県でもほぼそうした結果だったようで、少ない県では七割弱だったところもあります。行政の担当者はどんな見通しをもっていたのか、疑問を感じます。
 見込みより少なかったもののうち、約一割は、事業者側の報酬請求のミス(計算間違いや記載漏れ)などで、これはスタート直前まで制度の変更がたびたびあり、コンピュータソフトの開発が遅れ、手書きなどで対応したことなどもあるようです。
 書類をつくるだけでもとても大変な仕事で、私などは、お役所仕事の典型だと思っています。それにしても介護報酬を受け取れない事業者にとっては深刻な問題で、とりあえず国保連が四月分にかぎって無担保融資することで乗り切るようです。

重すぎる自己負担が問題

 しかし報酬支払額が見込みより少なかった根本的な原因は、利用者にとって自己負担が重過ぎるからだと思います。多くの事業者の間で「思ったほど利用者が増えない。自己負担が重過ぎるのでサービスの量を減らすお年寄りが目立つ」と指摘されています。
 大手の介護サービス業者が、「金もうけ」を夢見て参入したものの、いざ始まってみれば、利用者が少なくて、当てがはずれたのもしかたがありません。私の職場のように入所施設もあるのなら別ですが、在宅サービスだけではとても難しいと思います。またそこで働く労働者の勤務条件、労働条件はそうとう厳しいものがあると思います。
 「福祉はカネ次第」というのが政府の方針です。日本という国が金持ち優先社会であることを、つくづく実感します。私が担当している人をみても、やはり「お金持ち」の人はなんのためらいもないようです。
 要介護度の判定の見直しがありますが、家計の苦しい人には、配慮します。「状態が悪くなったので見直しをしたら」というふうにすすめられればいいのですが、「この人の自己負担が結局増えることにつながる」と考えれば、ためらいもでてきます。
 銀行の不良債権には膨大な税金をつぎこんだあげくに、デパートまで救済するという政府。ほんとうにいったい誰のための政府なのといいたくなります。 


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