20000625


映画紹介「インサイダー」

企業犯罪を痛快にあばく


 これは実話をもとにしてつくられた映画だ。米国のタバコ会社の犯罪と闘うジャーナリストとインサイダー(内部告発者)。彼らを通して、企業の冷酷な本質、テレビ業界の内幕が暴露されていく。
 主人公のバーグマン(アル・パチーノ)は、CBSテレビの「60ミニッツ」という報道番組の制作者だ。ある日バーグマンに、タバコ会社B&Wの内部資料が匿名で届けられた。米国ではタバコによる健康被害で損害賠償を求める訴訟が多発していたが、タバコ会社は「ニコチンには中毒性がない」との主張を繰り返していた。
 バーグマンはB&Wの研究開発部門の責任者だったワイガンド(ラッセル・クロウ)に接触する。ワイガンドは会社と対立してクビになったばかりだった。会社は企業秘密を知るワイガンドに対し、「秘守契約にサインしないと退職金を渡さない、家族のことを考えるならサインしろ」と脅しをかけてきた。
 会社の卑劣なやり方に怒ったワイガンドは迷った末に、バーグマンの取材に応じた。インタビューでは衝撃的な事実が語られていく。会社は「ニコチンの中毒性」を知りながら隠していたこと、脳へのニコチンの浸透を早めるために、発ガン物質の添加を行っていたことなどだ。
 しかし、タバコ会社の圧力によって、テレビ局はワイガンドの発言を放映しないことを決定した。テレビ局内で孤立無援となったバーグマンは、告発者を守るために一人で反撃を開始した……。 

 告発者を葬り去るために企業、マスコミ、警察がグルになって襲いかかってくるリアリティ、迷い悩みながら内部告発を決意するワイガンドの心の動き、バーグマンのジャーナリストとしての信念と行動力。そうした要素がミックスされて、緊迫感のある痛快なサスペンス映画となっている。
 この物語は、もちろんタバコ会社の敗北に終わる。実際に米国のタバコ大手4社は97年、46州が起こした健康被害による医療費支出増をめぐる訴訟で、2060億ドルの賠償金を支払う和解に追い込まれた。
 そして現在、米国タバコ会社の販売戦略は、喫煙被害が十分に認識されていない日本などに向けられている。タバコの害毒について考えさせられる映画でもある。(U)
東宝系劇場で上映中 


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