20000615


パート解雇して外部委託

これが設備投資の実態

流通労働者 橋口 綾子


 今年の春闘は五月の半ばまでもつれ込んで、やっと妥決しました。
 職種は流通業ですが、大手デパートやスーパーが軒並み苦戦している中、私のところは昨年度も増収でした。しかし春闘の回答は前年より二千円も低い低額回答、例年より半月以上も長引き、最終的にも前年よりかなり下回る賃上げとなりました。
 システム変更や新規事業の立ち上げで、仕事量は増え、休日も消化できないほどなので、不満は高まっています。しかし、忙しすぎて「団交どころではない」状態に陥っています。
 増収とはいっても、個人消費は相変わらず冷え込んでいます。テレビCMなどで客を広く集め、一時は売り上げを伸ばしましたが、長続きはしません。CMは、効果が消えるとまた打ちたくなる麻薬のようなものです。収益構造は悪化するばかりです。
 六カ所の物流施設を二カ所に集約する大規模設備投資や、大幅なシステム改変など、言葉どおりの「リストラ」(再構築)を行っています。金利も低く、土地代も下がり、建設コストも大幅に下がっているため、設備投資のチャンスだと会社側はほくそえんでいます。
 しかし、各物流設備を閉鎖統合することで何百人ものパート職員が解雇され、新施設は「アウトソーシング(外部委託)」で運営されます。再雇用を希望しても、いったん解雇、別会社で新雇用のため、これまでの時給も保障されなければ、有給休暇もなくなります。
 また、大手通信業者と共同出資でIT(情報技術)事業にも進出しますが、専門家が派遣されてくるため、新部門に移る職員は一人だけ。これまでのところはつぶし、新しく構築する事業は、「アウトソーシング」という「外注」か「派遣」に取って代わられます。働く者にとって何のメリットもありません。これでは雇用不安も解消せず、個人消費も回復しません。
 民間の設備投資が回復し、景気が上向いたという政府発表の裏側は、こんな状態です。「設備投資」の後は「リストラ」が待っているのです。 


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