20000415


「お客さま」の争奪激しく

ケアプラン作成はまだ半分

ケアマネジャー 須山 道代


 四月一日から、たくさんの問題を抱えながら介護保険制度がスタートしました。介護の現場にたずさわる人、介護される人、家族、介護されない人…混乱の中での見切り発車です。
 いうまでもなく、介護保険制度は、これまでの国の社会保障制度の根本を大きく変えて、国民から新たに保険料をとり、介護や支援を求める人に「利用料」という形で新たな負担を強いるものです。これまでも福祉は切り捨てられてきましたが、実際に始まってみて、ますますその感を強くしています。
 たとえばデイケアに通うのを楽しみにしていた人が、利用できなくなったり、利用回数を減らさざるをえなくなるような事例はたくさんあります。介護保険料を支払う上に、実際に利用する場合に一割の自己負担をするのは、経済的にも大変です。金持ちはたいしたことはないかもしれませんが、低所得層には相当に厳しいものになると思います。
 業者(私自身も在宅介護支援事業者ということになっていますが)や施設にとってみれば、利用者は「お客さま」であり、いかにして「お客さま」をひきつけ、よその業者に取られないようにするかが、最大の課題です。テレビでも最近よく「コムスン」のコマーシャルが流れていますが、私の地域にも出てきています。地元の社会福祉協議会のヘルパーさんもいますので、ますます競争が激しくなってくるでしょう。「お客さま」の争奪です。
 実際、いろんな施設からまわってくる文書が、「お客さま」言葉で書かれるようになってきました。コンサルタントのような人ががそうさせているのでしょうが、正直いって気持ち悪いです。これが「規制緩和」の成果なのでしょうか?
 いずれにしても、三月初めからケアプランの作成でほとんど休日返上で毎日夜八時、九時まで残業してクタクタになっています。私の受け持ちは約六十人で、まだ半分しか出来上がっていません。介護サービスはスタートしているのに。ケアプランの作成は、事務量がぼう大で、一日に一人分くらいしかできません。大体五十人程度が一人のケアマネジャーでできる人数と想定しているのですが、施設によっても人数は違いますし、別のところでは毎日夜十一時まで残業して何とか四月一日に間に合わせたというところもあります。
 今年初めくらいからでもプラン作成が始められるような体制なら、こんな無茶な仕事をしなくてもよかったのですが、なにせ三月一日に最後の説明会があるというようなことですから、間に合わないのは当然です。
 とにかく四月一日にスタートさせるという至上命令があって、あとは走りながら考えろという国の姿勢ですから、ショートステイの「おむつ代」など、まだ細部の運用ではっきりしていないものもあります。県に問い合わせても、対応する人が違えば答えがまったく違うといったような状況です。
 鳴り物入りでスタートした介護保険ですが、この先どうなるのか。よくなるとは誰も思っていないと思います。それをいかにも「よくなる」かのようにいう与野党の政治家には、本当に腹が立ちます。介護の現場で働く私たちも、介護を必要とする人も、家族も、ほんとうに割り切れない思いです。 


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