20000415


人減らしで人員は3分の2に

現場は不満でいっぱい

労組がもっとがんばらねば

繊維工場労働者 黒田 直樹


 繊維関係の工場に働いてもうすぐ三十年になる。規模は百人くらいで、業界では中堅といったところだ。県内に工場が二つあり、会社はこの十数年に中国やマレーシアへも進出し、国内でのコストをできる限り抑えて、海外への設備投資にまわしている。海外から半製品を輸入し国内で加工・製品化している。また中国が巨大市場へ発展することを見越して工場だけでなく営業拠点の整備なども進んでいる。
 組合は全国一般に加入しているが、私の工場では残念ながら非組合員のほうが多いのが現状だ。十五年くらい前に工場が移転し、労働者の数も三分の二に減った。
 春闘は、一万二千円の要求に対して会社の回答はいまのところ四千八百円にとどまっている。去年が五千百円だったので、このままでは去年を下回ることになる。しかも賃金体系が能力給や勤続給だけでなく複雑な計算になっているので、実際にはあまり賃上げにならない人も出てくる。私自身も手取りは二十数万円といったところで、余裕などなく、妻がパートで働いてやっと生活を支えている。
 それでも、組合があるからなんとか会社に要求し、交渉もできるのだが、組合もない中小企業のところでは経営者の胸三寸で勝手なことをやられると思えば、もっとがんばらねばと思う。
 今年の春闘では、大手が軒並みゼロ回答だったり、分社化で賃金切り下げといったことまで平気でやられている現状だ。正直言って「なめられている」のではないかと思う。ここ数年、大手組合のなかには春闘の見直しなどという議論も公然と出ている。実際、現場の実感からすれば「闘わんなあ」「あてにならんなあ」というふうにしか見えていない、労働運動の現状があると思う。
 たしかに大手の組合幹部は、いい暮らしをしているし、ゴルフばっかりやっている連中もいる。だから自民党から「アホ」呼ばわりされるのだ。しかし、それは私たちのように中小企業で働く圧倒的に多くの労働者の実態とはまったくかけ離れている。
 連合はあっても、地域での共闘や共同行動などはほとんどなくなって、バラバラになっている。産別や単組でがんばっても限界があるからナショナルセンターがあり、地域のセンターがあるのではないか。それがほとんどあてにならない。首切りに協力するような組合があるから、他の会社の経営者もカサにかかって攻撃してきている。
 昨年から、他工場への出向が頻繁になってきた。去年は三カ月の出向だった。今年もすでに出向が始まっている。私も五月から一カ月出向だ。生活のペースも家族の団らんもまったくなくなる。出向でなくても、人減らしで仕事の中身は労働強化がすすみ、毎日の仕事では手がしびれるほどきつくなっている。非組合員の中からも「ここの工場もいつまであるのかなあ。そのうち閉鎖かなあ」という不安の声も出てきている。三月からの出向で、現場で人は減っているし、五月からの生産調整にそなえてストックをつくるというので、それまでの二交替から三交替に勤務が変更になって、生活時間もめちゃくちゃだ。現場は不満でいっぱいだ。 


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