20000315


日産リストラの陰で…
聴覚障害者に過酷な現実

長谷川 三郎


 日産は昨年十月十八日、村山工場閉鎖、日産車体京都工場閉鎖などのリストラ案を発表しました。これは大変なことですが、皆さんは、日産には聴覚障害者が働いていることを知っていますか。村山工場には約四十人、京都工場には六人が働いています。
 その聴覚障害者は、異動か退職を迫られています。聴覚障害者にとって問題になるのは、現状を理解して判断するだけの情報が得られているかどうかです。村山工場には手話通訳できる人がいますが、リストラ発表時も手話通訳がなく、日産が倒産したと思った聴覚障害者もいました。
 今後ですが、これだけの不況ですから、誰もが転職するあてがない中で、聴覚障害者が新しい仕事を得ることは不可能に近い実際があります。だから聴覚障害者の中には、単身赴任を決意した人もいますが、多くが新しい環境への不安と家のローンの残りに頭を痛めています。
 日産には異動を対象にした特別赴任手当があり、三十万円から三百万円までが条件によって給付されます。それでもローンが七百万円も残る人もいます。しかも異動先で家を建てれば、その分も払わなくてはなりません。
 また、環境の変化についていけるかどうかの問題があります。座間工場から村山工場へ移動した八人の聴覚障害者の中には、「人間関係が苦しい」と退職した人もいます。こうしたことがまた起きない保証はありません。
 引っ越しした先で、親が障害者であることや、本人も聴覚障害をもっていることで子供たちがいじめられないだろうか、との不安も消せません。
 それ以上に問題なのは、聴覚障害者が百五十人以上働いている下請け企業のことです。リストラのために、下請け企業そのものがなくなる可能性もあります。その場合、多くの障害者がどうなるのか……。
 地元の職安や聴覚障害者協会は「直接の相談はほとんどない」だけでなく、日産リストラの先行きがまだはっきりしなので、何とかしたいが、手をこまねいているのが現状です。
 こうした問題があることは、なかなか報道されませんが、聴覚障害者の仲間は悩んでいます。四月はじめには、異動先、所属、異動時期などが発表されますが、彼らの希望がかなうことを祈ると同時に、労働組合がきちんと対応することを希望します。 


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