20000225


なぜ米軍が賃金削減を提案
基地従業員は米国の奴隷か

米軍基地労働者  山岡 勇太


 私は、米軍基地に勤める労働者です。最近、米軍内で主に日本人技術職を対象に、等級の引き下げが行われるとみられています。その件で米軍の上司から、この二月に入って正式に説明がありました。
 説明の内容としては、おおまかに言うと、「日本政府からの要請で主に技術職を対象に賃金の抑制が行われる」とのことでした。 
 だが実際はそうではなく、米側の雇用担当のほうから技術職を対象とした等級の格下げ案が日本側の担当窓口である防衛施設局に示され、日本側がそれを受け入れ、日米で労務協定の改定が執行されたというのが実際のようです。
 日本国籍を有する大方の建築、土木、機械、電気などの技術職は九等級で長年職務を遂行してきましたが、協定執行の結果として九から七に格下げされるものと見られています。
 新協定の内容は、現在の技術職九等級を廃止して、あらたに、技術職を九から七までのレベルを設置し、各々の職員を四月一日付けで、レベルに応じて新しく九から七まで割り当てるということです。ちかぢか、各技術職を対象に、米軍内の雇用課の米国人職員により面接が行われ、その結果、たいていの人が格下げになるものとみられています。
 この格下げは私たちには寝耳に水の話で、表面には出ませんが、大変に不安な状態ををかもし出しています。
 現在、やっている職務内容は、実質全員同じレベルをやっているわけで、そのことは面接の結果、等級のばらつきが各々に発生したとしても、変わらないものと思われます。同等の仕事をやっていて待遇の格差がでた場合、モラルの低下、仕事の割り振りなど、大変な混乱をまねくものと思われます。結果的に目に見えないコストがより以上にかかるものと思います。

組合を無視して等級格下げ
 ご存知のように、基地従業員の給料は、日本政府の思いやり予算でまかなわれています。この等級の格下げ、つまり実質的賃金カットに関して疑問なのは、なぜ米国側がわざわざ、米国の予算でもないのに、実質賃金のカットを日本側に要請するのかということと、事前に協定の改定が直接影響を受ける私たち当事者に何の通知もなされず、一方的に行われたということです。
 全駐労にその件を問い合わせたところ、すでに施設庁側から、全駐労には去年の時点で通知がなされていて、私たちの方に通知してなかったというわけです。
 ところが、その件で施設庁側と全駐労との間で合意事項がとりかわされているということで、それは「現職に対する等級の格下げはしない」ということです。しかし、実際はその合意を無視する形で、格下げが行われようとしています。
 膨大な思いやり予算に比べると、賃金は、微々たるものにすぎません。米軍側に対する居住、光熱、上下水道の費用をそのまま日本政府が面倒をみて、日本人の賃金を実質カットするというのは、本末転倒ではないでしょうか。その賃金カットの案が米国側からでたというのも驚きです。

日本人が担う基地内業務
 米軍内部での建築、土木、電気、機械などの多くの職務は、日本人が担当しているのが、現状です。設計、工事は工期が、長いスパンにわたるのが通常で、現地に居住する技術者でないと、職務を遂行できないのが実際で、二、三年しか滞在しない米国人では職務を遂行するのは、物理的に無理なのが実際です。ある課では、三、四年も米国人の担当技術課長が不在の課もあります。
 実質、米国人の技術職はいなくても、予算などの管理、組織的な部分をのぞいては、日本人だけで十分機能していますし、それが現状でもあります。米国人の立場は、管理的な内容がほとんどで、下部の日本人従業員に職務をいいつけて、業務の進行を管理するのが主な仕事です。
 日々の細かい時間のかかる多くの内容は、日本人がやっています。また、米国人は頻繁にバケーションの意味合いで休暇をとりますが、二、三週間が普通で二、三カ月にわたる場合もあります。その間、日本人がほとんどの職務を遂行しなければなりません。日米地位協定のいいとこどりにも程があります。 

各議会で取り上げてほしい

 今回の等級の格下げは、思いやり予算の使い道が何を優先して行われているかという、米側の意思をみる端緒になるのではないでしょうか。思いやり予算は、日本人の血税です。その使い道は、米軍人、軍属の生活などが最優先で、血税を払っている日本人へは最後ということでしょうか? 
 これでは、私たちは奴隷とはいわないまでも、あまりにも、彼ら米国人に従属、隷属された立場におかれているといえます。
 たしかに、等級に関しては、専門的にいえばいろいろあると思いますが、基本的に日本人の税金の使い道の決定権が彼らにあり、給与の削減などの重要なことまで、米国側にゆだねるというのはおかしな話ではないですか。 
 今回の、上位の等級者を対象にした格下げ案は、結果的に日米間に大きなマイナス要因になるのではないでしょうか。上記内容を、国会や地方議会で取り上げていただけないでしょうか。(提供・沖縄情報センター) 


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