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国の進路めぐる大衆運動を

自主・平和・民主のための広範な国民連合・代表世話人 槙枝 元文氏に聞く


 自自公連立の小渕政権は、対米追随で、大企業が国際的大競争に有利になるための政治を実現すべく、「巨大な党」を背景に反動的な内外政策をおし進めようとしている。一方、国民諸階層には失業と倒産・廃業、いっそうの収奪など、その犠牲が押しつけられている。国民諸階層の広範な戦線を拡大することが、ますます求められている。来る十一月二十〜二十一日に全国総会を開催する「自主・平和・民主のための広範な国民連合」代表世話人である槙枝元文氏に、自自公政権成立後の情勢や課題などについて聞いた。


 今ほど、日本の国全体をどう動かしていくか、政策はどうあるべきかについての議論が必要であるにもかかわらず、それが骨抜きになっている時期はない。
 国民の政治不信が非常に強いが、実際は政党不信だ。政党にそれぞれの政策があることで政党政治が成り立っているはずだ。だが、どれが野党でどれが与党か、どれが働く人びとの味方か、国民にはその見分けがつかなくなっているからだ。
 かつての五五年体制では、片方の社会党が問題がありながらも「働くものの政党」として位置づけられていたし、自民党は「財界の味方」と、敵味方がはっきりしていた。しかし、今ははっきりしていない。この四〜五年の間に、六つも政党を渡り歩いた政治家もいるくらいだ。これは政治家の責任だ。
 今の政党は、政治家のアパートに過ぎない。政策とかイデオロギーではなく、そこに入った方がよいポストにつけるか、カネ回りがよいか、当選できるかということをみて政党を移り歩いていく。しかも小選挙区制で、いっそうそれが顕著になっている。

問われる労組の役割

 労働組合もそうで、労働組合の役割は、もちろん労働者の生活を維持し、労働条件を守るという経済的な側面が第一義だが、平和と民主主義を守るというのは、労働組合運動の前提として必要なものだ。
 日本がかつて太平洋戦争に突入した時には、労働組合はすべて解散させられ、産業報国会になった。戦争になったら労働組合の存在すら認められないようになるし、憲法を改正して徴兵制が実施されれば、職業選択の自由もなくなれば、基本的人権が侵される。
 それらにもっと注意を払うべき労働組合が、ガイドラインの「ガ」の字も言わないし、憲法についても「改憲」か「護憲」かを決定もできない状況だ。そして、中小企業で働いている労働者は非常に苦しめられているし、大企業の労働者もリストラが起こっている。しかし、生活を守るための団結権の発動もできない。こういう状況だ。
 連合自体は「民主党支持」ということで枠をはめようとしているが、民主党が本当に労働者の味方なのか。今度代表になった鳩山氏は、「自分は保守本流です」と言っている。そして、憲法で陸海空の三軍を保持することを主張している。
 こういう人が党首である政党を、労働者の味方として応援しようというのは、本来はおかしい。こういうことだから、組合員の中から、あちらこちらで反発が起きている。今こそ、労働組合は「政党支持の自由」を掲げて、自らが判断した方がよい答えが出ると思う。

連携して憲法改悪阻止を

 そういう状況の中で、日本の政治は対米従属で自主性がなく、主体性もない。「日本は米国のジャパン州だ」という声もある。
 九六年の「日米安保共同宣言」は、事実上の安保条約大改定で、完全な軍事的対米従属化といってよい。日本を米国の軍事基地として使用しますよ、ということだ。
 こういう事態の中で、自自公連立ができあがり、五五年体制でもできなかった日の丸・君が代法案とかを、特段の議論もなく通してしまっている。そしていよいよ憲法調査会を設置して、憲法論議を始めようとしている。民主党は「議論するのはよい」などと言っているが、憲法を変えようという前提の土俵に乗ってどうするのか。今ぐらい、独立国家日本としての危機はない。
 残念なことに、野党が分裂して、そういう政策を安易にやっていける状況をつくっている。
 基本政策ではいろいろあるだろうが、日本の軍事大国化に反対すべきで、憲法前文と九条の平和主義と民主主義を変えようとする土俵にはまりこんではいけない。だから、全野党、その他の勢力を合わせて大きくは憲法を守るという点で連帯し闘うという、護憲連合戦線のようなものをつくる必要があるのではないか。

情勢は国民の側のチャンス

 だが、社民党自身も、今の基本政策のままでは国民の支持は得られない。
 「護憲」といっても、なぜ「安保条約を堅持」して護憲なのか。他国と軍事同盟を結ぶなど、憲法違反だ。自衛隊についても、当面は国外に出ず、専守防衛に徹することにして、いずれは国土保全隊のように再編していく。そういう方向に進むべきだと思う。
 本来、いまは野党のチャンスだ。あれだけの悪法を通したことに対する批判は、与党内からでさえあるくらいだ。
 しかし、民主党が野党第一党といっても、野党なのかどうか。憲法改正を言っているようでは、民主党にほのかに期待を寄せた人も、「あれじゃダメだな」と思っている。
 だから、社民党がかつて消費税問題でとったときのようにきちんとした態度をとれば、人は寄ってくるはずなので、きちんとすべきだろう。
 共産党も、憲法も議論は反対でないとか、国旗・国歌自身はよいとか、そういう態度が導火線になって、悪政がどんどん進んでいる。土俵に乗ってチェック機能が働けばよいが、土俵に乗ったら負けることがはっきりしているのに、その土俵をつくることに賛成している。
 国民の怒りは潜行しており、行き場を探している。日本の進路をめぐって、大きな大衆運動を起こす必要がある。各地には分散的だが運動がある。それを中央へ波及させるようにしなければならないだろう。


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