990915


全国から女性70人が訪朝

日朝友好で反動政治を打ち破ろう

朝鮮女性と連帯する日本婦人連絡会代表 清水 澄子氏に聞く



 「朝鮮女性と連帯する日本婦人連絡会」は九月十六日から八日間の日程で「日本と朝鮮をつなぐ女性のピースライン訪朝団(女性のピースライン訪朝団)」を派遣する。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)への圧迫外交が続くなか、全国から約七十人の女性たちが参加するこの訪朝団はとても意義深い。同会の代表で、訪朝団団長の清水澄子・参議院議員に、訪朝までの経過や意義などについて聞いた。


―「女性のピースライン訪朝団」を取り組むきっかけは何ですか。

清水 「朝鮮女性と連帯する日本人連絡会」は、今年で二十五周年になります。

 新たな日米防衛協力の指針(新ガイドライン)関連法が、「朝鮮有事」を理由として出され、昨年の人工衛星打ち上げから、日本の世論は「北朝鮮バッシング」一色になってしまった。バッシングだけでなく、それを利用して憲法改正まで平然と発言する雰囲気ができてしまった。これは大変危険なことだと思います。

 日本中が「北朝鮮からいつミサイルを撃ち込まれるか」と騒いでいますが、このようにつくられた「北朝鮮像」で日本中がコントロールされる中で、「日の丸・君が代」法制化や盗聴法など、つくられていく政治の流れが見えなくなってしまっています。

 こういう時だからこそ、人と人の交流がとても大事で、日朝間を「平和のラインにしよう」ということで、訪朝団を呼びかけました。全国から約七十人の女性が参加します。全国から女性が北朝鮮に行き、自分の目で見て、帰国したら自分の口で伝えることが大事だと思っています。

 水害にあっていろいろ活動している北朝鮮の女性たちと話し合うことで、日本が人道支援をしなくてはいけないという当り前のことを理解して、日本の政策がいかに間違っているかをわかってもらうためにも、交流してきたい。

 それから歴史認識の問題があります。国交がないのだから元従軍慰安婦の問題など、何も解決していない。元慰安婦の女性たちと交流したりもしたいと考えています。

 北朝鮮の女性たちにも日本の現状への不信があると思います。日本の女性たちとお互いに意見交換することで、「武力で平和はつくれない」ことがわかるでしょう。私たちはお互いの友好で、この政治の壁を破っていくことができると思います。

―清水さんが日朝交流を取り組むようになったきっかけは何ですか。

清水 私は一九七二年に初めて北朝鮮へ行った時、いろいろと反省させられました。

 革命博物館を見て、ものすごい衝撃を受けました。そこで見たものは私たちが知らないことが多く、朝鮮半島で命がけで抗日闘争が闘われたことは知りませんでした。日本の憲兵や軍隊の弾圧の中で、すごい反帝闘争をしてきた歴史を知らなかった。隣の国のことにこんなに無知で平気でいたことへのショックがありました。

 日本における平和運動には、かつて植民地支配してきた国の人びととの問題、謝罪や補償というものが、ほとんどありませんでしたし、過去の戦争犯罪を自ら裁いてきませんでした。植民地支配への歴史認識をもたないと、日本の平和運動は空洞化すると感じました。

 また在日韓国・朝鮮人に対する差別もあります。強制連行されてきた子孫に対して、何も知らない日本人が「いやだったら帰れ」という。道徳的、人間的に、何の反省もないことは怖いと思いました。日本の平和運動がまずやらなければならないのは、自国の歴史を知ることです。そうすれば朝鮮半島との平和と友好の課題にぶつかります。そこで、七三年に「朝鮮女性と連帯する会」をつくりました。

 政治は対立していても民族として血がつながっていますから、韓国の女性たちも、北朝鮮の女性に会いたいという願いがとても強くありました。そこで、韓国と北朝鮮と日本の女性の交流を、「アジアの平和と女性の役割」という名前のシンポジウムを開く形でやりました。はじめは日本で、そしてソウルとピョンヤンで開きました。

 北朝鮮から韓国へ十五人の女性が、韓国から北朝鮮へは五十人の女性が三十八度線を越えました。

―日本政府の朝鮮政策についてどのようにお考えですか。

清水 韓国では金大中政権になって、「太陽政策」でより包括的に問題を解決しようとしています。水害被害では、どの国も人道支援をしたり、ボランティアや市民運動がやられているのに、日本はぜんぜんやっていない。去年から経済制裁で直行便までストップしている。日本がもっとも北朝鮮を敵視した政策をとっています。

 政府は「北朝鮮が建設的な姿勢をみせるかどうかだ」といいますが、日本だけ孤立しており、政府はいずれ方針を変えざるを得なくなるでしょう。

 政府は「対話と抑止」といっていますが、実際は対話がなく「抑止と制裁」。対話のない外交はあり得ません。政府は決定的な過ちを犯しています。

 外交手段をもたずに、どうやって平和や友好が出来ますか? まず一日も早く国交正常化交渉を再開するべきです。

 日本は周辺事態法までつくり、軍としての行動をしやすくしています。世界一の軍隊をもつ米国と、世界一の技術や経済をもつ日本が一緒になっているところへ、北朝鮮が攻めてくるわけはない。

 ところが朝鮮半島を利用して、安保体制を強化したり、「朝鮮有事」といって有事法制をつくろう、憲法も改正しようとしている。

 韓国の女性たちは「日本が北朝鮮に攻めてきたら、私たちが攻められているのと同じだ。自衛隊がわが国土に一歩でも踏み込んだら私たちは北朝鮮と手をつないで自衛隊と闘います」と言う。

 結局日本全体が「北朝鮮はこわい」と思わせられながら、日本自身がアジアに対して覇権国になっていく危険性にみんなが気がついていないことの方が危険だと思います。

 朝鮮半島は米ソ冷戦体制のままで緊張している。これを早く解決するのが平和運動の一番の要だと思います。


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