990625


天皇の戦争責任追及こそ遺族の役目

平和遺族会 小川 武満会長に聞く




 政府は日の丸・君が代を国旗、国歌とするため六月十一日、「国旗および国歌に関する法案」を国会に提出した。「自自公」体制で新ガイドライン関連法をはじめ盗聴法、労働者派遣法改悪、住民基本台帳法改悪など悪法が次々に成立させられようとしている。共産党が「柔軟」路線のあかしとして「国旗・国歌の法制化の容認」に踏み込んだ裏切りは重大である。日の丸・君が代問題について平和遺族会の小川武満会長に聞いた。

 「日の丸・君が代」法案に反対だ。「君」というのが天皇を指すと今度の政府案ではっきり出した。昔の国定教科書を見るとやはり「君」は天皇である。私たち遺族は年配者だから、君が代といえば天皇を賛美する歌と理解してきた。天皇の御代というのは、日清、日露から「大東亜戦争」と戦争の時代だという印象をもっている。

 しかも軍隊の中では「上官の命令は天皇の命令である」と教育を受けている。戦争の目的は敵を圧倒殲滅(せんめつ)することであり、上官の命令があれば人家を焼き、食料を奪い、女、子供までも敵は皆殺せというふうにいわれ、実際に体験してきた者が多い。そういう中で殺そうとして殺されてしまうとか、憎しみを受けて民衆から襲われるとか、いろんなことで広い意味の戦没者というものが生まれてきた。

 平和遺族会としては天皇の戦争責任を追及するということなくして、戦没者の死を真剣に受け止めることはできないというところに原点をおいている。

 昨年米国に戦争の証人として行って、これは過ぎ去った問題でなく、今日本が世界から問われている問題だということを痛感した。

 日本では、南京事件なんて昔のことだ、というような時代になっているときに、向こうでは今の課題として若い層に教育されて、若い人たちがそういうことをどんどんつっこんでくる。また米国籍をもっている中国人とユダヤ人の団体が組んで、日本の隠されたホロコーストを暴くという動きが盛り上がってきている。

 そういう状況で新ガイドラインを制定し、これを機会に国旗、国歌を法制化し、それを強制し、従わない者を処分するというような、まったく軍国的な教育に変えられていく恐れがある。いま本当に瀬戸際だと思う。日本の存亡の危機であり、決断の時にある。このままではアジアの孤児だけでなく、世界の孤児になる。


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