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座談会 福岡県知事選挙を闘って

県政変革の幅広い戦線を




 福岡県知事選挙で労働党公認の中村哲郎候補は十二万三千人の支持を獲得、前回の知事選挙から五万票伸ばした。また二十二の市町村で、中村候補の得票が共産党推薦候補の得票を上回った。福岡県知事選挙の成果や今後の展望などについて、候補者と選対本部の同志に集まってもらい、座談会を行った。


中村 哲郎 福岡県知事候補

上村 和男 党福岡県知事選挙対策本部長

平石 義則 党福岡県知事選挙対策本部事務局長


平石 労働党として二回目の福岡県知事選挙でしたが、麻生さんが二期目で百五十二万九千票、共産党推薦の政時さんが十八万六千票で、労働党の中村は十二万三千票を獲得しました。この結果について、どのように受けとめていますか、また内外の評価などはどうでしょうか。

上村 大きな前進だったと思います。力強い県民の支持をいただき、本当にありがとうございました。労働組合の皆さんから「よく取ったね」という評価をいただいておりまして、勇気が倍増しました。党内でも「よくやれたな、短期間の中でよくがんばったな」ということで一つの自信になっていると思います。

中村 失業や倒産といった情勢の中で、危機に立つ人たちの要求を取り上げてやってきたわけで、労働者の要求を取り上げて闘ったことが一定の支持を得たのではないかと思います。それから福岡への一極集中が進む中で、地域商店街の空洞化が深刻に進んでいる地域の商店街の皆さん、商工業者の皆さんの支持を得られたのではないかと思います。

 地域的には、北九州で共産党の拠点でもある若松区や戸畑区でも票を伸ばしています。筑豊地域では、「第二の閉山」といわれる石炭六法が打ち切られるというきびしい局面を迎えているわけですが、そうした地区でも票を伸ばしました。農業地域といわれる県南地域でも票を伸ばしました。ですからわが党の掲げた政策が、かなり広く県民の支持を得て前進ができたといえると思います。

平石 マスコミは、麻生さんが百五十万票で「大差で勝った」といっておりますが。

上村 そこのところは、私たちだけではなく、県政に責任を持つ各政党の皆さんとも話し合ってみたい。すでに社民党の皆さんを中心に、労働組合の皆さんや解放同盟の皆さんと意見交換していただいております。そのなかで、県政をどのような方向に進めていくべきか、麻生県政が今後どういう対応をしていくのかに注目しながら、県民の要求を反映して闘い、県政に突きつけていくような活動を繰り返して、本当の意味で県民多数が望む県政をどうやって実現するか、考えていきたいと思っています。

中村 麻生県政の四年間は、県民にとって冷たい県政だったと思います。四年間で福岡への一極集中はさらに進んで地域間格差は拡大しました。また三井三池の閉山、久留米のアサヒコーポレーションの問題、大川家具の問題、石炭六法の打ち切りなどと、失業問題も深刻になりました。麻生県政は県民各層、県内各地域の問題に配慮した県政ではなく、矛盾が拡大したと思います。しかし、われわれはそうした矛盾を的確にとらえてはいましたが、結果としては「麻生の大勝」となっているわけで、労働党・中村への支持という点で十分取ったかというと、不十分さを残したと思います。

政策が支持され 22市町村で共産党上回る

平石 マスコミの評価では、「労働党が五万票増やしたのは非常に驚いた」と。そのように県民の目に映っていることは、今後の政治闘争に重要な前進だと思います。それに政時さんが十八万六千票で、共産党は知事選ではあまり大きな支持を得ることができなかった。労働党は二十二市町村で政時さんよりも票が多かった。このことについてどうですか。

上村 二つの意味で重要だと思います。一つは、社民党や労働組合、解放同盟など、県民各層を代表する団体や政党の皆さんが、労働党が共産党に肉薄したことを喜んでくれましたので、今後彼らと連携して県政を正していこうとするときに、非常に重要な前進だったと思います。さらにそれ以上に、わが党の問題として、麻生県政を追いつめていく上で重要だった。

 もう一つは、共産党が掲げた政策と、われわれが掲げた政策のどちらが県民に受け入れられたのか。われわれの得票が高かった地域では、やはり政策がぴたっときたんだと思います。

中村 政時さんの政策の一番の弱点は、県政に対する評価がないことだと思います。もう一つは彼らには友が少ない。確かに組織的力量からみればわれわれより大きいですが、県議選で十四人もたてながら、知事選の票では差がないし、彼らは県内に友が少ないんだなと思いました。

 労働党が五万票伸ばしたことで、県民のわが党に対する評価が定着してきたと言えるのではないでしょうか。前回と比べて今回は、労働党を知って投票をした人たち、政策を支持し、共鳴して労働党に投票した人が増えたと思います。

 以降、活動していく上で、県民のそういう評価は非常に大事です。県民各層を代表する各政党の間でも、労働党は前進したという評価がありますので、他の政党や労働組合の皆さんと協力していけるような政治的環境をつくることができたと思います。

失業者アンケートなど これまでの闘いがエネルギーに

平石 労働党は、昨年はアサヒ靴の倒産や、一昨年には三井三池炭鉱の閉山など、製造業でリストラがどんどん進み、県民生活がいろいろな意味で圧迫されている中で、闘ってきました。そのような活動が知事選にどのように反映したのでしょうか。

上村 私たちは昨年から失業者の問題に取り組んできました。職安前でアンケートをお願いして、たくさん回答が寄せられました。こういう人たちの意見をもとにして、知事選では緊急対策として取り上げました。失業者の皆さんと役場へ行って、一緒に国民健康保険の減免措置などについて要求したりしました。知事選では、そういう皆さんから「投票したよ」と電話が入り、大変勇気づけられました。

 このような活動は、党がどういう人たちの問題を取り上げていくのかという、党建設の点で非常に重要だったと思います。それが知事選を闘う上でのエネルギーにもなった。

中村 筑豊などを回って首長さんたちと話をしましたが、彼らが言うには、麻生さんは通産省出身でしたから、当初は経済振興に一定の期待をした。しかし多くの筑豊の首長たちからすれば、石炭六法を存続するか、国が打ち切るならば県がなんらかの保障をしてもらわなければ、第二の閉山になる、と危機感をもっていました。ですから「公然と支持して動けないが、中村さんのいうとおりだ」と言っていました。川崎町では産廃問題などで「筑豊をごみ捨て場にするのか」と県に訴えに行くけれども、まともに知事が対応してくれない、これでは県民の知事ではない」と言っていました。そういう意味では保守的な人たちも含めて支持される政策であったと思います。しかし力量不足や、労働党・中村が多くの県民から見て「知事にとって変わる力」と映ったかどうかという問題はあると思います。

矛盾拡大は必至 県民の怒りをぶつけ闘う

平石 選挙後の状況や今後四年間、麻生県政と闘っていく上で、今後の展望などはどうですか。

中村 肝心なことは、麻生さんが行う県政と五百万県民各層との間にある矛盾が、縮小するのか、拡大する方向に向かうのかということ。与野党相乗りですが、自民党主導の県政という方向は強まったし、県民各層との矛盾はさらに拡大し対立も強まるだろう思います。

 だから労働者や中小商工業者、あるいは農業者を基盤にする政党である、社民党や民主党、その他公明党も含めた政党と麻生県政との矛盾は広がらざるを得ない。各政党は自分たちの基盤と県政との矛盾がどうなるのか、きちんと見通しを持つことが大事だと思います。われわれが県民各層と相談しながら、県民の利害を代表して闘い、麻生県政にぶつけていく闘いはますます重要になるでしょう。

平石 福岡で米軍の韓国からの避難訓練がやられたりしており、新ガイドライン関連法案が成立すると、九州や福岡は前線基地になっていくわけで、県政が県民の暮らしや平和を守る立場に立つかどうかも大きな課題になってくると思うんです。平和の課題も含めて統一戦線を形成し、麻生県政を追いつめていくということは大事なことになってくると思います。

上村 知事選では福岡一極集中政策批判と、「県政を県民の手に取り戻そう」を大きなスローガンに闘った。その上で県民十二万三千人から支持を得ました。前回に引き続いて県政を争い、さらに前進できたことは大きな意味がありました。麻生陣営が自民党主導が強まって、他の社民党にしても労働組合にしてもこのまま麻生県政を支持していいのか、考えていると思います。県民大多数の県政を実現するためにどうするべきなのか、共に考えて広い戦線をつくることを共にやりたいなと思います。


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