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座 談 会 神奈川県知事選挙を闘って

危機打開示す政党に成長




 四月十一日に行われた神奈川県知事選挙で、労働党は山本正治同志を擁立し、闘った。三十二万人にのぼる方がたから支持を受け、労働党が危機の打開を示す政治勢力として定着したことを示すものとなった。山本正治候補、山本喜俊選挙対策本部長、小杉ひでき選対事務局長に座談会を行ってもらい、選挙結果や今後の抱負などを聞いた。


山本 正治 県知事候補・党関東地方委員長

山本 喜俊 選挙対策本部長・党神奈川県委員長

小杉 ひでき 選対事務局長・党神奈川県書記長


―県知事選挙を闘い大きな成果をあげました。選挙戦を闘っての感想から聞かせてください

山本正治 三十二万人近い県民の皆さんからご支持をいただきました。また、たくさんの支持者の皆さんがポスターを張ったり、カンパをお寄せ下さったりしました。まずはじめに、皆さんに紙面を通じてですが、あらためて心からお礼申し上げます。

 特に今回は、非常に危機が深まって、失業者をはじめ県民生活の困難は深刻さを増し、政治への不満が高まった下での選挙でした。それだけに何としても県政を変えなければと決意し、労働者階級の政党として責任も感じながら選挙に臨んだわけです。

 とくに私が衝撃も受け、決意もあらたにさせられたのは、第一声でも訴えましたが、告示の二日前、三月二十三日に横浜に工場があるブリヂストンの労働者がリストラに抗議し、社長室で割腹自殺するという事件でした。ここまで労働者が追い込まれている。この声を聞く政治がない、何としても…と。こうした人びとの要求を代弁して政治を変えよう、そうしたものとしてこの選挙を闘おう、と。

 また、こんなこともありました。第一声の後すぐに近くの職安の前に行って演説したんですが、すると失業アンケートに答えてくれた方が出てきて、「中に入って失業者を激励してくれ」と言うんですね。タスキをかけたまま中に入って失業者を激励に行ったのですが、失業者の皆さんから何としても俺たちのためにがんばってくれと大変激励されました。告示前も期間中も、こうした声をいっぱい聞きました。

 しかし残念ながら、今回も相乗りの県政、実質自民党の反県民的な県政をうち破ることができず、危機の下で打開を求める皆さんの期待にこたえることがきませんでした。 それでも、そこへ到達できるに違いないという手応えというか、展望を実感することができたと考えています。労働党がこの危機の中で、打開を求める労働者階級あるいは県民の皆さんの期待を受け止め、大きな勢力として前進できる、そんな勢力に成長してきたことをあらためて実感した選挙戦でした。

共産党を追い越す勢いで

小杉ひでき 今回の選挙は、山本正治と岡崎知事、それに共産党およびその他二人の候補者で争われたわけですが、山本への支持が多かった地域は工場労働者が集中する川崎市、横浜市の臨海部、そして横須賀市です。伝統的に労働運動が強い地域です。

 共産党が推薦した候補は、横浜市、川崎市で割と多く得票を取っていますが、工場地帯よりも主としてその外側の地域で、青葉区とか緑区とかいった行政地区名称からもうかがえるように労働者でも上層、都市富裕層、そういった階層の多い地域です。それと県の北部地域です。教え子がいたのでしょう。ついでに岡崎氏ですが、支持が高い地域は県の西部地域などで、どちらかというと旧来の農村地域で、労働運動は強くない保守の基盤です。

 三つの陣営の主な支持基盤は非常に特徴的でした。今のように危機が深まっているもとで、それぞれの依拠する階級階層の声を代弁しながら、県政をめぐって争ったのだと思います。

 そして、労働者階級のところで労働党が共産党と争って前進しているという事実、これは重要なことだと思います。当面、ますますこの傾向は発展し、われわれは前進できるだろうと確信します。

山本正治 それはとくに長期的に、あるいは本質的にみて大変重要なことだと思っています。危機が深まっていざという時、そんなに遠い先ではないように思いますが、その時、労働者階級がどの党の旗の下で闘うか。

 今回闘って感じ、また、票の結果からも読みとれることは、労働者が、議会主義・修正主義の共産党を支持しなくなって、労働党を自分たちの政党として感じ始めている、このことです。そういう意味で、労働党の歴史的に果たすべき役割を感じています。

 実際にも県内の労働者をはじめとする各層の人びとから「非常に激しい争いの中で、三十二万人もの支持を得たのは、共産党を追い越す勢いで労働党が定着した証拠」との評価の声を多く聞いています。川崎のメーデーで参加する労働者にあいさつしましたが、その時にも「労働党はがんばった。今後ともがんばってくれ」との声が多く寄せられました。また、他の政党、社民党や公明党の議員の方がたからも同様に激励の声をいただいた。あらためて、これからの責任がますます重いと感じているところです。

山本喜俊 共産党との力関係を得票率でみると、だいたいわが党の一・五倍です。共産党はわれわれの何十倍もの党組織があり、ビラは九百万枚まいたといっている。県議候補三十一人、横浜、川崎の市議候補はさらに多くいる。それでもわれわれの一・五倍しか取れなかった。しかも、問題のある深刻な地域ではわれわれに劣っている。誰が労働者をはじめ県民の利害を守る政党になりつつあるのか、労働者はどの党を「俺たちの党だ」と考えるようになっているのかが、相当にはっきりしてきたのだと思います。

 それにしても、これだけ県民の自民党政治への不満が高かったにもかかわらず、民主党や社民党また連合の一部幹部などが相乗りで、実質自民党の県政を支えているのは、許されないことです。現場の活動家だけでなく、連合の有力産別の幹部から厳しい批判の声が聞かれましたが、これは当然です。

 たとえば横浜市内のタクシーの運転手から電話があった。その人は労働組合の役員もやっているのだが、「(連合が岡崎を支持しているが)労働組合は関係ない。現場の労働者は正しいことを言っている人を支持する。だから、がんばってくれ」と二度も電話をくれた。

保守層も共感した政策

―政策が大きな力を発揮したようですが、どうでしたか

山本喜俊 こうした前進は、私たちの主張・政策が、労働者階級を中心にしながら、今後神奈川県がどうあるべきか、打開の方向を指し示しえたからだと思います。政策、主張が他の政党の方がたや労働組合など各界の共感を呼んだのは、私たちの確信になっています。

 政策では、モノづくりを重視し、神奈川県の経済を活性化しよう、そのためには何よりも労働者を大切にし、中小企業や商工業者を大切にする政治でなければならないと訴えた。モノづくりについては今も神奈川新聞で「モノづくり法」を連載していますし、労働組合の皆さんの努力でモノづくり基本法が成立しました。モノづくりが必要だという世論づくりに、われわれのも貢献できた。そして政策が浸透していると実感した。政策は今でも生きており、今後も重要だと思っている。

小杉ひでき われわれは、大企業の一方的なリストラを規制し、モノづくり産業を新しい二十一世紀型で発展させよう、これを中心にして県内全体の活性化をはかることを訴えたわけです。いまの県知事、県政の方向はどうか。京浜臨海部一極集中型の、すなわち国際展開している巨大企業の工場リストラを支援する、工場跡地利用を支援するだけです。そのため、この地域の付加価値をどうやって高めるかに中心課題がおかれています。

 だから道路や鉄道建設も、県の開発計画はどうしても横浜臨海部への一極集中になる。県の西部など周辺地域は立ち遅れ、犠牲にされる。「地域バランス」のかけ声はありますが、実態はますます東西格差が開く。

 そこで「モノづくり重視」で全県がバランスよく発展する県土づくりを提唱した。これは県下の保守層にも広く受け入れられたと思います。

山本正治 小田原市などの県西部の地域があります。ここは伝統的な保守基盤ですが、新自由クラブ発祥の地と言ってもよいと思います。そこでは昨年の参議院選挙で自民党が、比例区の得票率で六%〜八%も減らし、支持を下げました。

 この地域は、県政の光が一貫して当たらずにきましたが、とくにここ十年あまり、オレンジの輸入自由化で地域の主要産業だったミカンが大打撃を受けて以来、さまざま問題がまさに噴出しています。いまはリストラ攻撃の激しい地域で、日産車体のある平塚市、日立などの小田原市、秦野市などです。工場跡地などには、大型店舗の出店ラッシュです。「不況」の影響で、箱根や湯河原の観光産業も大打撃です。

 地域の政治状況も、ですから激変しつつあります。参議院選挙結果に見られた、保守基盤の崩壊は地方政治にも出ています。昨年あったこの地域の首長選挙では、どこも新人が、それも若い方、すなわち旧来の地域支配勢力の主流でない人が当選しています。

 この地域の町でわれわれは今回、前回と比べても得票を伸ばして共産党を上回っていますし、小田原や平塚のような大きな市でも共産党に肉薄しています。従来の保守層、地域の支配勢力が急速に崩壊、分解している地域でわれわれは前進し、共産党に競り勝っている。

 これはわれわれの路線、政策上の優位性を示していると思いますが、非常に重要なことだと思います。

 しかし、地域の首長選挙で現状批判派が勝利している実際からみますと、われわれの前進は前進にしても不十分です。新しく町長になった皆さんは「現状打破」をやったわけですから。

 この辺のところをきちんとできれば、今後われわれがさらに大きく飛躍的に前進できると思っています。この西部地域の状況は、県下の保守派全体の中にあることですから。この問題はもっと研究しなければなりません。

県政変革の組織者に

今後の展望や抱負について

山本正治 もう、展望と抱負はほとんど述べました。危機の中で、大衆の不満と怒りの真の組織者となるために全力で努力します。

山本喜俊 これから労働者や中小企業が、リストラなどでいっそう生活が困難になる。多くの職場がなくなるだろう。中小企業家から「地域経済が破たんする」と言われている。本当に県政を変える、誰のために県政を運営するのか。これは四年後の選挙ではなく、いま問われている。そのために各界と連携し積極的に行動していきたい。


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