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緊急インタビュー

NATOのユーゴ攻撃

主権国家に対する野蛮な侵略

駐日ユーゴスラビア連邦共和国大使 ラドスラブ・ブライッチ氏に聞く




 米国を先頭とするNATO諸国は、ユーゴに対する空爆をエスカレートさせながら、ミロシェヴィッチ政権を屈服させようと画策を進めている。NATO域外への無制限な軍事介入につながる今回の空爆に対し、NATO諸国内部でも異論が強い。中国大使館への爆撃によって中ロ両国は、即時空爆停止を求めた。世界各地で空爆即時停止の声も広がっている。緊迫する事態の中、駐日ユーゴ大使のラドスラブ・ブライッチ氏に緊急インタビューをおこなった。


ユーゴスラビアに対するNATO軍の空爆が開始されてから一カ月半以上になります。この空爆についてどのようにお考えでしょうか。

ブライッチ大使 関心をもって下さってありがとうございます。労働者のソリダリティ、国際連帯は大切なことだと思います。

 NATOのユーゴスラビアに対する侵略に反対する声が強まっています。日本だけでなく、NATOの加盟国の中でもそういう声があると思います。

 最初に、NATOがしたことはどんな行為か、ということについてお話しします。

 NATOが挑発されたわけでもないのに、ユーゴスラビアに対しておこなっている攻撃は、国連憲章に反する侵略行為であり、国際的な法秩序に反する侵略行為であり、理性と良識に反する侵略行為であります。NATOのこのとてつもない野蛮な侵略は、誰の利益にもならない、合法的でもなければ人道的でもありません。それは独立の主権国家に対する侵略行為であるのみならず、平和と安定と人道に対する反対行為です。

 この凶暴な空爆の主な犠牲者は、罪のない市民であり、彼らの財産であり、ユーゴスラビア全土にわたる公共施設であり、また同時に真実であり、正義であります。軍事的侵略をしながら一方的宣伝戦を展開し、関係する国際条約を明白に破る、この行為は政治問題を解決するのに、民族問題あるいは民族間の紛争を解決するのに役立たず、和平を達成する方法ではありません。

解決の第一歩は空爆の即時停止

 私は皆様方にいくつかの質問をさせていただきたいと思います。ユーゴスラビアを攻撃し、破壊することは賢明な方法なのでしょうか。そのような前例のない侵略、空爆の政治目的はいったい何なのでしょうか。軍事力というものは、国連安全保障理事会の承認なしに国際的な紛争を解決するのに用いてよいものでしょうか。それから環境の危険な破壊、地域的な安全と協力を不安定化させること、隣国に対する経済的被害、こういうものはどうでしょうか?

 NATOによればその答えは次のようなものです。新しい世界秩序の哲学は「力は正義なり」という考え方に基づかなければなりません。

 このことはNATOが世界を運営し、自分自身の利益を押しつけるために、世界を監視するということを意味します。しかしながら二十一世紀を迎えるにあたって、もっと正しい新しい世界秩序は、主権の平等、民主主義、法の支配に基づいてつくられるべきであり、国連憲章の諸原則、人権は正しく、また広範に保障されなければなりません。

 この目的は、解決を押しつけることによって達成することはできません。また脅迫することによって、軍事力を行使することによって、また人道上の破局を引き起こすことによって達成することはできません。すべての争いと諍(いさかい)いを政治的、平和的に解決することによって達成することができます。そのような政策、方針は危機の当初からユーゴスラビア連邦共和国によって実行されてきました。

 NATOの新しい哲学は、NATOの権威と信頼性を世界の世論の中で保つ正しい方法ではありません。また、新しい戦略を進める正しい方法でもありません。

 危機を解決する正しい第一歩は、即時無条件に空爆をやめることです。このことは、主に民間の標的が狙われている、特に最近では中国大使館まで狙われたということを考えると特に重要です。私達は、民間施設への被害、この四十七日間の資料を皆様のために用意いたしております。いわゆるNATOの誤爆によって民間人三百二十五人が殺されました。NATOが言っている「爆撃にともなう被害」ということで、千二百人が殺されました。工場は五十工場が全壊、ないし半壊しました。五十万人の労働者が仕事を失うことになりました。中国大使館の三人が誤爆で亡くなっています。NATOは情報の間違いであると説明しています。

 また、NATOは国際的な基準からいって使ってはいけない爆弾を使っています。クラスター爆弾二万発。劣化ウラン弾、電力ネットを破壊するのに使うグラファイト爆弾。民間施設に対する被害は、資料に詳しく書いてあります。(別掲 これが被害の実態!)

理解できない日本政府の態度

日本の国民、および政府に対するメッセージをお聞かせ下さい。

ブライッチ大使 第一に、日本の方々にわが国の事態をもっとよく理解していただきたいと思います。第二には、危機を解決するのに日本の方々がかかわって下さることを期待します。ことに主要八カ国(G8)の中でもっと積極的にかかわって下さることを期待します。最後に、わが国で起きていることに対して客観的アプローチをもっとやっていただくことを期待します。特に日本のマスメディアに対して申し上げたいことは、マスメディアの方々がもっと厳格に憲法を守って行動していただきたいと思います。

 私の個人的意見ですけれども、日本のメディア、ことに英語で書かれているメディアでは、表現の自由、言論の自由が日本国憲法に記されているにもかかわらず、何らかの制限があるような気がいたします。

 日本の一般の国民の方々にかんしていえば、世界の他の国の一般の国民よりもわが国の事態に対してよく理解されているように見受けられます。私達が必要とすること、お願いしたいことはもっとバランスのとれた、もっと客観的な日本のマスメディアによる報道です。真実、事実を発見するためには、争いの中の両者の意見、見方を追求しなければいけないと思います。

 私達が日本の皆様から受けるメッセージ、インターネットのホームページを通じて受けるメッセージでは、この危機から脱出するために私達を助けてくれる、このようなメッセージがございます。私は、この争いが解決された後で、日本の政府あるいは国民の方達が、経済再建にあるいは人道援助に一層積極的に協力していただけるものと確信しております。

 でも本当に私達が必要としていることは、日本の政府、日本の皆様がこの争いにもっとかかわっていただいて、政治解決を見つけだすのに力を尽くしていただきたい、ということです。なぜかというと、私達は日本はいくつかの西側諸国よりもっと客観的だと信じているからです。今日まで残念ながら日本政府はNATOの侵略を非難することをしていません。私達はそれを理解し得ません。


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