990415


日の丸・君が代法制化反対

歴史事実を認め、アジアと共生を

南京大虐殺六〇カ年全国連絡会世話人
小学校教員 松岡 環




 先日、名古屋で南京大虐殺六〇カ年全国連絡会の会議がありましたが、そこで日の丸・君が代法制化の話がでました。私の周りでももちろんみんな反対です。

 世羅高校の校長の自殺が一つの契機になって、「教職員と校長の対立があって、反対する教師がいてけしからん、法制化しなければいけない」といわれていますが、広島からの参加者によると事実は全然違いました。自殺した校長は温厚、誠実な方で、昨年赴任当初から教職員と一体となり、地域に信頼される学校をめざして取り組まれたそうです。また、生徒や教職員の思いをしっかり受けとめようとされ、職務命令という厳しい指導に悩まされながら自分の考えをはっきり語られたと聞きました。

 今回の広島での動きは、沖縄が集中攻撃されたときと同じで、強権を行使して、平和を願い公平な話し合いを望んでいる生徒や親、教職員の声を圧殺しようとしています。

 これらの動きの背景には、右翼が勢力を盛り返している状況があります。最近では右翼が草の根型の市民運動になり、われわれが広く市民に呼びかけてきた手法を使っています。集会には、これまでの動員法に加えて、チケット販売所などで入場券を売ったりしています。そういう集会では若者や家族連れの姿も見られます。

 日の丸・君が代法制化問題と、右の動きは大きく関係しています。今、日本では右翼、マスコミ、ジャーナリストが連携して「自由主義史観」など、歴史をねじ曲げることを堂々と書ける時代になっています。

 日の丸・君が代が法制化されたら学校現場に一番影響があるでしょう。戦前の皇国史観、国家主義の中で若者たちが戦争にかり出されていった状況と同じように、学校というわくの中で教えられる立場の子どもたちは拒否することはできません。教職員も「この法」に反する実力行使をすることで懲罰を受けます。そうなればほとんどの人がそれにあらがうことは、できなくなるでしょう。

 革新的といわれているある政党は、この問題について「討論すれば」という但し書をつけて賛成していますが、現実には、現場の意見を反映する討論の場はほとんどありません。「職務命令だから掲揚・斉唱します」となり、強権を使ってやられてしまう可能性の方が強いのです。

 情けないことに現場も分断され、反対していく力がなくなっています。

 このままでは世の中が右傾化し悪くなっていくのは確かです。中国をはじめ台湾や朝鮮半島の友人たちは、日の丸・君が代も含めて、歴史事実を正視しない動き、特に自由主義史観の動きに非常に敏感です。アジアの人びとと連帯していくには歴史事実を認めることが大事です。

 これからも事実を明らかにすることを運動として掲げていきます。私は自分の良心に従って行動したいと思っています。


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