990101


農民運動

営農が維持できる政策を

北海道農民連盟 北 準一 書記長


 九三年のガット・ウルグアイラウンド協定以降、農産物は市場原理導入の方向へ大きく動いた。コメも食管制度から新食糧法に変わり、コメをはじめとする農業経営者、農家は生活が成り立たないほど大幅に所得が減少している。

 北海道は農林水産業が中心で、農業の衰退は地域経済の崩壊につながる。また、景気低迷による雇用問題も非常に大きい。そこで昨年の十月二十四日には、危機に陥っている地域経済を回復させねばいけないと「農業・地域経済危機突破全道決起大会」を連合・北海道と共催で開いた。危機突破大会は五千人が結集し、農家負債整理対策や緊急稲作経営安定対策などを求める決議を採択した。

 道内の農業は深刻の度合を超えていると思う。

 国の政策は、規模拡大でコストを下げる方向にあり、 農業者は規模拡大に努力してきた。しかし、農産物の価格低迷や米価などの引き下げで、拡大のために借りた負債が払えなくなっている。

 だから「おれはもう限界だ」と、離農が続いている。規模拡大してきたのはいわゆる「担い手農家」であり、本来ならばこれからの農業を担っていくべき農家がやめざるを得ない。新農基法では、「担い手対策」といわれているが、なにが担い手対策なんだ、と言いたい。いま農家を続けている人にも、地価が上がり土地を売って借金返済できるならば離農するという「予備軍」はたくさんいるだろう。

 政府はコメを自由化しようとしているが、自由化に対処するべく国内の農業政策が施されたかどうか。自由化されれば農業はさらに厳しくなる。政府は中山間地域の所得保障を打ち出してはいるが、生活をきちんと成立させるという観点での所得保障ではない。

 自給力の向上もいわれているが、食糧自給率をカロリーベースで一%上げるのに、一兆円の予算と、およそ十万ヘクタールの農地が必要となる。きちんと農業政策を位置づけ、予算も配分していかなければ不可能。「農民が努力すれば自給力が上がる」ということではない。

 「農家の努力」なんて語りごとだ。この厳しいなかで農家として残っているのは、がんばっている人ばかり。しかし、すでに農民は「国民の食料を担っていく」という自覚が乏しくなってしまった。そんなことをいう余裕はない。

 ここ数年、政策要求が実現されにくい環境にある。運動量は増やしているのに、農業関係の報道も少なく、目に見えない苦しい運動となっている。

 しかし、環境維持や公益機能など広範な意味も含めた農業経営の維持、存続を求めて、今年も運動を継続していく。また、直接所得保障政策をしっかりと日本の農業政策に組み込むことを求めていく。

 北海道の農業問題としては、農業の維持、食料生産の維持をしていくうえで、前述のような規模拡大による負債処理対策も最重要課題で闘っていく。


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