990101


水俣病、チェルノブイリ、アイヌ文化…

やりたいことが見えてきた

フィーリング大切にしたい

高校三年生 加藤 菊緒 さん


 通信制高校三年生の加藤菊緒さん(十八歳)は、勉強のかたわら水俣病やチェルノブイリのボランティア活動、北海道でのアイヌ文化交流など、型にはまらない自分流の生き方を実践中だ。仕事のこと、勉強のこと、ボランティア活動などについて、お話を聞かせていただいた。


通信制高校を知ってすごくよかった

◆水俣病を知ったきっかけは、どんなことですか?

水俣病のことは、東京で開かれた「水俣展」に行って、初めて知りました。水俣病のことは、小学校でも中学校でも勉強したけれど、それとはまったく別なものとして、水俣が自分の中に入ってきました。

学校で四大公害病ということで学ぶじゃないですか。それは、すごく上っつらだなって思いました。チッソがどうのこうのという知識は、後になっても分かることです。せっかく勉強する機会があるんだから、ほんとうに水俣の人たちの状態とか感じていることを知りたかったな。

「水俣展」では、そういうことを知ることができ、すごくよかった。そのあと水俣フォーラムのユース会員になりました。ユース会員だけで会合を持ち、私たちに何ができるのかを相談しています。昨年十二月に開催された「水俣・つくば展」では、展示品の搬入作業を手伝ったりしました。

◆チェルノブイリのボランティアのお話を聞かせてください。

 私は九七年七月、チェルノブイリ子供基金の交流ボランティアとして、ミンスク近郊のサナトリウムを訪問しました。そこでは、ボランティアとして参加した人たちがそれぞれに一週間の授業をもち、お茶とか折り紙などを教えて、交流してきました。

 そのサナトリウムは、十歳から十五歳までの甲状腺ガン手術を受けた子供たちが保養する施設です。九七年にはウクライナ、ベラルーシから百五十六人の子供たちが、特別保養に参加していました。汚染地に住んでいる子供たちの病状がよくならないから、汚染されていない地域で汚染されてない食べ物を食べて、一カ月くらい暮らします。ここでは、薬によるケアよりも心のケアを大事にしています。

 チェルノブイリ原発事故から十二年もたったから、人びとの関心も薄れてきている。被爆した子供たちが大人になり、仕事や補償をどうするかということが問題になっています。現地の人も最初は汚染を問題視していたのに、「なんともないじゃないか」って汚染地に戻ってしまう人も多い。今年もまた、一カ月間くらい行く予定で、準備しています。

◆高校生活はどうですか?

 通信制高校に入ったのは、ある専門学校に行くための高校卒業資格がほしかったからです。いまは、もうその専門学校に行こうと思わない。自分の感じたことや、やったことが、それだけに限らなくなってきたということ、また広い面でいろいろ見れるようになったのかなと思う。

 でも、通信制の学校があるということを知って、すごくよかった。通信制だといろんなところに行くことができるし、すごく時間を有効に使えます。どこにいても、テレビとラジオがあれば勉強できるから。

 スクーリングで学校に行けば、いろんな年代の人とも話ができる。中学を出てストレートで来る人もいるし、高校を中退して来る人もいる、六十代、七十代のおばあちゃんもいます。「あんたのためにあるような学校だね」と、親にまで言われる。

 予定がない日はアルバイトしています。いまは、個人経営の八百屋のレジをやっています。ドアのしきりがないから寒い風が入ってくるけど、外が見られるからいいかな。

◆これからやりたいことは?

 去年の八月から七カ月間、北海道で過ごしたんですね。中三の時にアイヌ文化を守る「アイヌ・モシリ・ワークキャンプ」に参加して以来、アイヌの人たちの生活にすごくひかれている。先人の生活の知恵とかいうのはすごい。そういうことから、いますごく文化人類学がおもしろいなと思っています。

 いろいろなことを学ぶときには、フィーリングの部分を大切にしたいです。学問的な部分もおもしろいと思うんですが、それは私が現実の生活を知っているからそう思えるんだと思う。本を読むだけでは、大切にしたいことが持てなくなるような気がします。

 これまでポツンポツンとやってきたことが、一つのまとまりの中でつながりをもってきている。自分がやりたいことが固まりつつある感じがします。でも、もっとつき進みたいこともたくさんあります。

 こういう生き方ができたのは、母親が「あなたが考えたようにしなさい」と言ってくれたのが大きい。大学に行こうかなって、いますごく迷っています。 

◆いまの社会への注文は?

 これまで自然保護とか野生動物の問題にはかかわってきましたが、人間にはあまりかかわってきませんでした。新聞を読むのは大好きですが、政治にまで関心が向いていません。

 家ではラジオしか聞きませんが、毎日まいにちニュースが流されますね。そのニュースがその後どうなったのかわからない。気になって調べていたら、また違うニュースがどんどん流れてきて、頭がパニックになりそうです。

 人間のエゴ的部分で物事をみてほしくない。企業も環境問題に対応しなくてはいけなくなっていますが、せっかくそういう方向に行きはじめているんだったら、もっとまわりのことをみてほしい。無農薬もやられるようになってきているけど、それも結局は自分のためでしょう。農薬は土にも負担がすごくかかるんです。そういう目でみてほしいなってことを感じます。


Copyright(C) The Workers' Press 1996,1997,1998,1999