現在の金融危機の状況をいえば、ある資料では不良債権を抱える銀行十五行を救済するために三十一兆五千三百五十億円が必要。さらに証券会社十二社の一般の預り金一千四百九十二億円、生命保険会社六社の公表された不良債権三兆一千九百十九億円に救済が必要だといわれている。総計は三十四兆八千七百六十六億円になる。
政府はすでに、日本銀行特別融資(無担保、無期限)で北海道拓殖銀行に二兆二千億円、山一証券に一兆一千億円、徳陽シティー銀行に五千億円を投じた。日銀特融そのものが最終的には政府が保証するもので、税金投入が前提になっている。
同じような論理で、これらの銀行、証券会社、生命保険会社に日銀特融が行われれば、最終的には公的資金による援助となる。つまり税金の投入になる。
政府は、預金者保護や中小企業保護のために金融機関救済が必要だといっている。しかし、これはペテンだ。まず預金者保護だが、すでに預金保険機構があり、一千万円以下の預金については保護されている。普通の人は一千万円以上の預金など持っていないのだから、それだけでよい。
また銀行の中小企業への貸し渋りを防ぐというが、さまざまな中小企業向けの制度がすでにある。中小企業金融公庫、商工組合金融公庫など政府系の公庫が無利子、無担保で中小企業へ融資を行えばよい。
憲法では納税義務と使途を規定しており、政府が勝手に金融機関という民間企業を救済するために税金を投入することは許されない。もちろん大衆の預金が保護されそうにもないと判断できる場合には、憲法二十五条で保障された生存権の立場から、個別に厳密な法律をつくって税金を投入することはあり得る。
しかし、いま政府が行おうとしているのは、預金者救済とは関係なく、金融機関を丸抱えで救済しようというものだ。しかも情報がまったく公開されず、いくら金融機関に不良債権があり、また大衆の預金が危機のなかにあるのか、全く私たちは知らされていない。これで税金投入などとんでもない話だ。
今回の改訂では、破たんした金融機関の合併を支援するようにした。しかし、破たんした金融機関を支援しても資金を回収できる見込みはない。本来の保険機構の趣旨からはずれ、税金投入の方向に加速している。
政府自民党の金融機関への公的資金投入だが、自民党の梶山案は経営悪化している銀行などに優先株(普通株に優先して配当)や劣後株(普通株の配当を済ませた残りの利益について配当)などを発行させる。それを財政投融資で引き受ける。そのために十兆円の新型国債を発行し、政府所有のNTT株などの売却益で償還するという。しかし、政府保有のNTT株などは、国債整理基金に入っている。つまりこれまでの国債の償還にあてることが決まっているものだ。それを使うのであれば、文字通り赤字国債だ。だから社民党やさきがけも反対している。
その他の自民党案もあるが、 どれも政府が保証するというもので、それは最後は税金を投入するということになる。
一方で財政構造改革法案を通しておきながら、これでは行財政改革どころではなくなるだろう。
そして、梶山案による新型国債だが、NTT株を売却すればこれまでの国債償還に必要な資金がなくなる。そこでその穴埋めだが、医療保険の負担増、年金の負担増と適用範囲の縮小などが考えられる。そして消費税をさらに引き上げるだろう。七%、一〇%ととし、一五%、二〇%にすることも時間の問題だ。これこそ増税そのもので、一般国民への犠牲の押しつけだ。
だから政府の責任は重い。政府と金融機関の民事、刑事責任を追及すべきだ。
かつてエイズ問題で厚生省の課長が追及されたが、政治家や金融機関の経営者の個人責任を追及すべきである。
そのためには、やはり国民運動を起こさなくてはならない。税金の使われ方がおかしいのだから、不納税運動を起こすべきだ。金融機関に対しては代表訴訟もある。現在は、自治体財政には住民による監査請求・訴訟などがあるが、国についてはそうした制度がない。しかし、憲法では納税義務と使途も決められているので、納税者権利基本法によって納税者訴訟を国税でも起こせるようにする必要がある。そのためにも情報公開が必要だ。
また現在の超低金利では、年金生活者などはとても生活できない。年金生活者への特別金利への措置も必要だろう。
現在、法人税率は三七・五%の比例税率となっているが、累進化すべきだ。大企業からは五〇%取り、中小企業は一〇%程度にすべきだ。なぜなら大企業は優遇措置によって、実質的に税金をあまり払っていないのだから、普通に払ってもらえれば社会保障などにも十分にまわせる。当然、現在の金融機関も含めた大企業への優遇措置を廃止すべきだ。
中小企業の税率を下げれば、経済活動が活性化する。そして大店法をむしろ強化し、中小企業が自由に活動できるようにすべきだ。
これらで総需要が増え、日本経済は活性化する。