970905


許すな介護保険の導入
社会福祉が消えていく

特養ホームがつぶされる

特別養護老人ホーム
親愛のぞみの郷(東京・荒川区)施設長 大塚 幸男氏に聞く


 介護保険について厚生省は中身を小出しにしており、省令、政令などが出てこないと全体像は分からないが、これまで公表されたものだけで考えても、話にならないものだ。
 まず私たちのような特養ホームは、ほとんどが経営不能になり八割はつぶれるだろう。危機感でいっぱいだ。

 これまでホームは税金で支える措置費収入があったが、これが保険収入にかわる。その収入を在宅介護の料金をもとに計算してみると、公営の老人ホームでは、一人当たり月五十三万円の措置収入が、介護保険による保険収入になると二十四万一千円になる。民間のホームも同様だ。

 これでは職員を半分とか三分の一にしなくては経営できないし、今までの施設サービスを維持できない。施設の費用では人件費が大きいので、収入が減れば人数を減らすしかない。しかも、介護保険が導入されると事務がこれまでの三倍ぐらいに増えると予想されており、それも頭が痛い。そして何よりも職員そのものが施設サービスの財産であるわけで、職員を減らせば社会福祉は終わりかなと感じる。

 その後はもう福祉ではないかもしれないが、ソロバン片手に採算ベースに乗せるように利用者負担を増額するしかない。現在は入居者から平均五万円の費用を受け取っている。介護保険になれば、現実には六割以上の人が払えなくなるので、生活保護をとってもらうしかないだろう。新入居者では、金のない人は入れなくなるだろう。

 厚生省は、在宅をベースに考えているようだが、ヘルパーの賃金を時給千百円程度に抑えていては十分なサービスは保障できない。

 介護保険では、これまでつくってきた社会保障、福祉はなくなってしまう。つまり人間を人間として扱わなくなってしまう。もちろん地域の人びとや福祉関係者もがんばるが、そういう介護保険のもとでは、高齢者には現状の体力、心身を維持してほしいという願いの気持ちにならざるを得ない。


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