970725


日中国交回復25周年

日中関係の発展をめざしシンポジウムを準備

日中学生会議
第10回実行委員長・佐藤賢氏、第9回実行委員長・藤順一氏に聞く


 日中両国の学生の相互理解と友好促進のために毎年開催されている日中学生会議の公開シンポジウムが、八月十日、東京で開催される。日中学生会議の新旧実行委員長に、シンポジウム開催や、日中関係に対する思いを聞いた。


―まず、日中学生会議の最近の活動などについて聞かせて下さい。
佐藤 日中学生会議は今年で設立十一年目で、中国の北京大学、清華大学、上海の復旦大学などの学生と交流しています。日中の学生の相互理解を目指して活動してきました。

 最近では日本開催の会議もはじめて今年で五回目になります。また、日本にきている留学生にも目を向けようと、今年の三月には留学生シンポジウムを行いました。

 留学生シンポでは「チャイニーズ・ドラゴン」という新聞の国際部の方に、中国と日本の文化や人間の違いについて話していただきました。

 また留学生の生活面での問題や、文部省の留学生十万人計画と、入国をひきしめている法務省の食い違いがおきている話がでました。学生だけでなく日本語学校で働いている人などの参加もあり、日本に留学するための手続きがむずかしいという話も聞けました。

 日中学生会議といっても学生にあまり知られていない面があるので、もっといろいろな人に幅広く考えてほしいと思い、六月に新聞第一号を発行しました。今後月一度発行していく予定です。

 昨年は、日中関係があまりよくないときに中国で会議を行いました。シンポジウムではお互いが抱いているイメージと現実の間にギャップがあるんではないかという問題意識から、日中間にある誤解をテーマとしてとりあげ、人民大学客員教授で、本業は商社に勤めている方から問題提起をしていただきました。

 日中関係というのは同文同種とよく言われるが、中国人は考え方からいえばむしろアメリカに近く、大国としての意識が強いという話しが印象に残っています。厳然と存在している違いを認識しないとギャップから衝突も起きてしまう。違いをのりこえるには、草の根レベルの地道な交流、学生会議の存在の必要性を再認識しました。

 分科会では経済・政治・教育の三つの分科会で話し合ったのですが、経済分科会が一番盛り上がりました。僕は政治分科会でしたが、「アジア共同体」をテーマとして提起しました。アジアで共同体までいかないまでも経済的なつながりをもたせようという動きがあります。それを発展させて、例えばEUのような政治的な組織に出来ないかということを提起したのですが、中国側はやっぱり自国が大事だという考えが強いなと感じました。

 「政治的な外交の駆け引きというのは中国は一対一でやるからそういう政治的なものにはあまり加わりたくない」という意見が出されました。国としての意識、国益を日本と比べすごく優先させている国だということを感じました。

 あと中国側が興味をもっていたのはオウム事件や日本の政党がどうなっていくか。中国側からみると政治家が不用意な発言をするというのが理解できない。尖閣諸島や靖国神社など、僕らもアジアへの配慮が欠けていておかしいと思うって言ったんです。そうしたら、「どうして有権者はそう考えているのに、そんな政治家が実際日本にいるんだ」と聞かれました。中国人にとって右翼とかそういう存在が理解できない。そういう話しは盛り上がりました。

佐藤 今後のことを言うと、まず八月十日に行う日本開催の会議を成功させたいです。
 あと、新聞のほかにもインターネットにホームページを開いたりしたいです。

 日本開催では、今年は国交正常化二十五周年なので、それをテーマとしてシンポジウムを企画しています。今年はお互い協力する存在として日中関係を発展させていくためには何が必要なのかを考えたい。

 シンポジウムのなかで主に取りあげたいことは、まず日中関係を進めて行くために相互の魅力について、それから、日中関係が国際社会からどういう役割を期待されているのかについて考えてみたい。とりあえずとなりの国だからつきあうというのでは日中関係を存続することは難しいと思います。

 日本から中国に対しては、発展している中国の市場とか、魅力を感じる面が多いと思うのですが、逆に日本はどうか。過去の戦争認識の問題があるし、経済も落ち目。マイナス要素の方が目立ってくる。それではいけないと思う。日本の魅力はあるのかを考え、これからも関係を持続していくべきだと考える場にしたい、と思います。

―さきほどから出されていますが、日中関係にあるさまざまな問題についてどのように考えていますか?
佐藤 日中関係というのは過去の問題があるので、それがいろいろなところに出てくると思う。僕は国交正常化以降に生まれた人間で、日本も中国も世代が変わって考え方もどんどん変わっている。

 大学では以前は第二外国語といえばドイツ語だったのが、中国語を選択する学生が急増している。それだけ中国に対して関心が向いていると思うのですが、過去のことを知らなければ今後中国人と接していくことは不可能だと思う。

 そして過去を知りながら、現在の問題についても冷静に話し合えるような関係にしていかなければ、発展的な関係は出来ないのではないか。

 会議を通じて感じるのは、お互いに相手の国に対して一面的なイメージしかないこと。中国では特にマスコミの報道が一面的であるということが影響していると思いますが、逆に日本はどうかというと、日本人も中国に対して、情報は多元的かもしれませんが一面的なイメージをもっている。

 中国語の履修者が増えているという話しがありましたが、ブームになっていてみえていない部分もあると思います。

―どうして日中学生会議の活動に参加するようになったのですか?
佐藤 大学二年の時、中国文学科にいるのだから、メディアを通してだけでなく、実際に中国を見ようと思って、中国へ行った。日本に戻って日中学生会議の顧問の天児先生に授業で知り合って日中学生会議を紹介されました。他大学の、とくに中国についてさまざまな関心をもっている人と一緒に何かやるということは自分にプラスになると感じて参加しました。

 日中学生会議に参加するまでは日中関係についての考え方が月並みで、仲良くしようとか日本はいけなかったとか、教科書的な考え方しかもっていなかったのですが、実際の日中関係を考えるとなると一面的な考え方だとどうにもならないと感じました。活動すればするほど日中関係について分からなくなりながら、試行錯誤しています。

 中国に対して興味をもったのは、大学入学のころにNHKスペシャルで中国特集の番組を見て、発展する中国のパワーを感じたのがきっかけです。大学の授業の中で学生会議の紹介があり、参加するようになって三年間続けています。

 学生会議に参加していなかったら中国とこれほどかかわっていたかな、と思います。中国ブームの中で中国語を勉強して、ときどき中国を旅行して、それだけになっていたと思う。旅行だけでは経験できないこと、特に中国の学生と話しをする機会を得られたことは本当によかったと思います。大学卒業後も、中国と仕事をして行ける職場につきたいと考えています。


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