中小電気店3万が転廃業
橋本首相は「経済構造改革」と称し、流通・物流、情報通信など十五分野での規制緩和を徹底し、三月末には規制緩和推進計画をさらに前倒ししようとしている。「改革」の名による規制緩和が国民に豊かな未来を約束するというのは大ウソである。この期間の大店法の規制緩和で中小小売店はいかなる運命をたどったか。福岡県電機商工組合理事長・前田弘昌氏の声を紹介する。(一月二十六日、九州地方委員会旗開きでの来賓あいさつより)
一昨年は千平方メートル以下についてはなんら(出店の)規制がない、届け出だけでできるとなりました。この一年ぐらいの間に大店法は骨抜きになっています。
これは、国内の事情ではなくて、日米政府間の取り決めの圧力が加わってこういうことになっているのは皆さん承知の通りです。
私は地元では商工会議所の世話もしているのですが、中小の店はほとんどみな同じ状況にあります。薬局もそうですし、酒屋さんもそうです。おコメの販売店も同じ状況です。あるいは本屋さんもだめになった。あそこも店が閉まった、ここも店が閉まったというのが今日の状況です。私たちもそのなかの一小売業者としてたいへんな圧迫を加えられているのが現状です。
ある人が言いました。「もし規制を全部緩和していくと、資本主義社会のなかではまさに弱肉強食以外のなにものでもないよ」と、こんな話もあるわけです。
規制は、緩和すべきところと、さらに今から規制をしなければいけないものもあると私は判断をしています。私たちは圧迫を加えられて、次々に転廃業に追い込まれている状況を毎月みているわけです。二カ月に一回理事会があると、福岡県下で多い時で十軒、少ない時でも五軒と、どんどんつぶれている状況が報告されています。これはもう、将来的には(電気店は)なくなるのではないかというぐらい状況はひどいわけです。
日本は今、親と一緒に住んで親を看取りたいという若者は、調査によると一六%しかいません。そうすると、ほとんどが高齢化、私もその一員ですが、こういうことになると、NHKの報道を見た時に、ああこんなことが起こるんだなあと思いました。しかも北海道は雪で寒い。たいへんだなあと。中小の店がつぶれただけでそんな悪影響がすでに出ているんです。
そんなことで私たちは、昨年東京で「全国危機突破大会」をやりました。その時、政治家が十人ぐらい来ていました。私は九州代表でしめくくりをやったのですが、「大体政治家はなにをやっているんですか」と私ははっきり言いました。そしたら、お茶にごしかなにか知りませんが、十一月二十六日に「地域電気店活性化、高度化ビジョン研究会」というのをつくって、まあ「電気は残しておかなければ」と、こういう話になったようです。どれだけのことができるか、これから私たちも挑戦をしていくわけですが、そんな状況です。
単価ダウンの理由をつくっているのは、生産が海外に移転しているからです。国内に空洞ができるのは当たり前のことです。しかも、それが失業率の上昇になって、三・五%で戦後最高です。ところが、それ以上に潜在の失業者がいます。これを含めるとたいへんな数字だと思うのです。
空洞化でさらに設備投資が弱体化していきます。国の税収も減っています。このことは決して忘れてはならないと思います。いろいろ議論はありますが、私たちのふところから出るのが九兆円というのは間違いありません。そういう問題も起こってきます。それなのに外国へ出て行って失業率を増やし国の税収を減らす。そして、国のモノづくりの弱体化をきたしているのが今の状況です。
世界一であった日本の粗鉄鋼の生産が、昨年はその座を中国に奪われました。もう日本は鉄王国ではなくなりました。このことも空洞化から起きていると思います。
いま日本のカラーテレビは八割、ビデオが六割、ステレオにいたっては九割が外国から入ってきています。輸出大国が輸入大国になったということです。如実に数字が示していますが、このままいくと半導体は韓国が一位になるだろう。そしてテレビとか電子機器は、中国が第一位になるだろうといわれています。人気を呼んでいるパソコン、これは台湾が一位になるのではないか。このまま手をこまねいているとそうなるであろうといわれています。
私たちはすでに五、六年も前に、何らかの規制をしなければいけないよと、橋本首相が通産大臣時代に申し上げに行ったことがあります。それに対してなんら手が打たれていなかった。今日の状況はそういうことであると思います。
こんななかで私たちは、是非にでも高齢化社会に向けて生き残りをかけていきたいということで、全国的な組織を動かしながら一生懸命に運動をしています。
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