20020101

中小企業が発展する政治を

大田工業連合会(東京)事務局長 高野 六雄氏インタビュー


 大田区内には6000社の企業があり、工業会に加盟しているのは2016社だ。
 昨年11月に中小企業危機突破総大会を開いた。総大会の前に各企業の実態調査も行ったが、売り上げが減少したと答えた企業は、製造業で75%、全体でも68%にのぼった。「困っていること」で最初にあがっているのが、「受注の減少」だ。その次に「単価の切り下げ」「資金繰りの悪化」と続いている。
 仕事量は3〜4割は減っている。1週間仕事がないという企業もある。先行きの見通しがないと自主廃業したところもある。
 以前も倒産がないわけではないが、次々にということではなかった。とくに、自動車関連が良くない。日産がもうかったというが、経営者は「あれはみんな俺ら中小企業から吸い取ったんだ」と言っている。大田区は金型業者が多かったが、工場が海外に移って、仕事量が半分になるという状況だ。産業空洞化は日本全体の問題だが、大田区でも深刻だ。
 もう一つは資金繰りだ。かつては金融機関は「こういう仕事をやってみないか。将来発展するぞ」と、支店長あたりが言ってきた。銀行は間口が結構広くて、いまの中堅企業はそのおかげで育ってきた。ところがいまは、担保がどうのという話しかしない。経営者自身の担保が足りないと親戚の土地、家屋まで担保に要求してくる。仕事があって約束手形を持っていても、そんなものは何の証拠にもならないと言う。これが今の銀行の実態だ。金融機関はもっと勉強して、企業人の頭と腕を見分けるようにしてほしい。  行政に対しての要求は、制度融資を充実させてほしい。これは、利息が安いわけではない。もう少し低くしてくれというのはある。それから、融資限度額を引き上げてほしい。
 いずれにしても、仕事を受注して手形で金融機関に落としてもらおうとしても、先ほど言った銀行の実際があって、仕事があっても材料を買えない。そういう時に備えて制度融資が役立つ。国や都は制度融資を充実してほしい。
 それから、税制面の要望は、とくに相続税のところだ。中小企業は、株式会社といっても株はほとんど社長が持っている。それを子供に相続すると税金がかかる。3代続けば資産がゼロになるといわれるぐらい相続税が高い。何とかこれを安くして、企業が存続するようにしてもらいたい。
 中小企業が生き残るには、日本経済が回復することが一番だ。だが、それも望めそうもない。だから、大田区の場合は新製品開発に一生懸命取り組んでいる。高齢化社会に対応したものとか、環境型、文化的なものとか、いろいろ考えている。だが、中小企業が独自で開発、研究するのはなかなか大変だ。国や都など行政も支援してほしい。
 構造改革は強い者が勝つ。米国をモデルにしているようだが、強い者は優遇されて弱い者はほっぽり出される、そんな社会は殺伐として社会不安が起きる。
 本来は、これを正すのが政治だと思う。以前は弱肉強食ではなく、きちんと棲み分けができてうまくいっていた。それが、大きいところがどんどん進出してきて、中小企業に、おまえはもうやめろと、こんな社会は良くない。基本的には政治がきちんとしないといけないと、強く思う。