20020101

ぽやぽやバンド ライブコンサート出前します
ハッピーロックで生きる希望を

ボーカリスト・丸川 よの さんに聞く


 バンドのメンバーは6人で、みんな働きながら音楽をやっています。俺は植木屋で、ほかには高校の美術の先生、コンピュータ関連、NTT関連、美容師などそれぞれ違う職業です。結成したのは14年前ですが、「むやみに肩に力をいれないで生きようよ」という思いをこめて、ぽやぽやバンドという名前をつけました。
 年間20〜30回くらいライブをやっていますが、ほとんどが屋外での出前ライブです。河原だったり山の中だったり、畑の中だったり。呼ばれればどこにでも出かけます。小学校の特別授業で子供たちに音楽を教えたり、お寺の敬老会にも呼ばれます。
 オリジナルは100曲くらいあります。こうでなければならないというスタイルは全然ありません。ジャンルは何ですかってよく聞かれるんですが、僕たちは「ハッピーロック」と、かってに呼んでいます。
 歌をつくるとき、基本的に僕がいいたいことは一つなんです。みんなで平和に健康に暮らそうよ、それしかないですね。それを直接歌うのか、もっと楽しい歌い方をするのかで、全然違うと思う。
 どこでだれが入っても続けられるように、あまり難しい曲はやりませんね。同じ曲でも、その場の雰囲気で変わる。聞いてくれる人の顔が違えば、変わるんです。
 CDをつくったらどうだと言ってくれる人もいるけど、必要性がないんですね。自分はライブでやりたい。自分の歌をテープとかCDで聞きたいと思わないもの。刺身みたいなものだから、刺身で食ってほしい。俺たちの音を聞きたい人はその場にいてほしいし、機械を通さなくても目の前にいるじゃないかってことをやっていきたい。

■山谷で出会った人びと

 山谷で最初に歌ったのは94年。すごかったですよ。ステージの前でまんじりともせず、こいつら何をやるんだろうって見ている。下手なことをやれば石でも投げられるような、ピーンとした空気が流れている。あのころは暴動の一歩手前の小競り合いなんかが、そこらじゅうであった時期でしたから。
 そのかわり、こいつらは話が分かるというふうに見てくれたら、全然態度が違うんですね。ウソがないところがいい。お金がなくても一生懸命接待してくれる。その気持ちがすごくうれしくて、毎年行っています。
 僕たちがステージでやっていると、山谷のおっちゃんたちが下で手をつないでサークルダンスが始まっちゃう。その光景はすごいですよ。
 寒いし、仕事はないし、そこらで寝れば凍死するかもしれない時期に、何百人いても笑顔なんて一つもない。その中で僕が歌をやって、しまいにはみんな踊り出すんです。
 山谷に行って、「たいへんでしょう」とか言って背中をさするより、「いっしょに踊りましょう」と手を差し出したほうが喜んでくれる。おっちゃんたちは今この冬を生きられることが一番大切なんです。おっちゃん連中が、楽しさの中に生きていく希望を見いださない限り、全然世の中は変わらない。そのために音楽ってあるんじゃないかなと思っています。
 1時間2時間先が分からないような生活している人たち、現実の中にどっぷりつかって暮らしている人たちに喜ばれ、みんなが歌を活力にしてくれることがうれしい。そんなとき、歌をやっていてよかったなと思う。大みそかと1月3日には山谷の天神大橋の近くで歌っています。ぜひ来てください。

■歌う中から見えてきたもの

 バンドのメンバーは、それぞれ生活を背負って、いろんなことを感じて暮らしています。僕の仕事も不況の影響を受けている。バブル期と違い、庭をつくる家も皆無に近い。仕事がないときはほんとにないから、たいへんです。死なない程度に生きている。
 そういう俺たちが、自分たちの素直な部分で気持ちよく音を出させてもらっているというところで、聞いてもらえるところがたくさんあるんじゃないかと思う。
 政治に興味はすごくあるし、政治がすぐ俺の後ろにあるんだという感覚では生きている。毎日生活していく中で、なんで俺たちの声が届かないんだろうと思う。でも、あきらめてはいけないという思いをすごくもっている。
 俺は30年ぐらい前から、アメリカナイズされた日本の社会はおかしいと言ってきた。やっと最近、そのことに多くの人が気づき始めているように感じる。米軍基地の問題でも、95年に沖縄県民の声が広がって、日本の世論になった。そういうことってこれからもありうる話だから、あきらめずにやり続けるんだという気持ちかな。
 いまの社会は、同じ働いている同士なのに、お互いのことが分からない。たとえば、百姓とか、サラリーマンとか、中小企業のおっちゃんとか、困っていることやいやなことの根っ子は1つだと思う。そこに入っていけるような歌ができたらなと思う。どんな職種の人が聞いても、「ああ、分かるよ」というような。それが俺にとっての連帯かもしれないね。

『サクラ ブギ』

 クサラ クサ
 ウマラ クサ
 ギブラ クサ

 サクラ咲くころ サクラふぶき
 サクラ舞うころ サクラふぶき

 廻る春に心踊らせ
 新しい春を唄う
 花の命はみじかいけれど
  くり返しあなたに春を呼ぶ

 吹けよ風よ 花をとばせ
  くまなく 春を 待つ人よ

  吹けよ とべよ 桜よ花よ
  心の中にとんでゆけ
  枯れ木に花を咲かせるように
  やせこけた国に春を呼べ
  サクラ散るころ
  心の中に花が咲く

 

『ヤマの人よ』

 Yeah′O  山の人よ         
         山に住む人よ
 Yeah′O  山の人よ
         ドヤに住む人よ
 Yeah′O  ドヤの人よ
         道で寝る人よ

 今年の冬は冷たい雨
 朝になれば人も凍る

 さむい さむい さむい 寒い夜だ
 こんな夜は酒が似合う

 花のお江戸の泪橋
 越すに越されぬヤマの涙
 Yeah′O