20020101

アジア共生こそ打開の道

狩俣 吉正 連合沖縄会長に聞く

 稲嶺知事は、観光客減少が米軍基地の存在に起因するということを、なかなか言いたがらない。だが、経済界の中には、これを認める人びともいる。昨年11月に連合沖縄と沖縄県経営者協会が共催した「雇用・経済危機突破県民大会」では、危機が「米軍基地が集中配備されていることに起因している」ことと、米軍基地の整理縮小、政府に対しあらゆる措置を求めることで合意した。
 失業率についてだが、9月は9.3%、10月は9.2%だが、実態は10%に達していると思われる。いずれにしても、深刻な事態だ。
 雇用問題について振り返れば、72年の復帰からバブル崩壊までは、沖縄では県外就職が順調に推移してきたため、県内失業率は全国一とはいえ、4%前後だった。ところが、バブル後は県外就職が縮小、県内の雇用増がそれに追いつかない。こうして、失業率は9%超で推移するまでになった。
 そもそも2001年前半は、NHKドラマの影響もあり、観光客は好調に推移していた。もちろん、安売り競争や不況で、消費は必ずしも好調ではなかったが。
 しかし、テロ事件直後、文部科学省が修学旅行の「自粛」通達を行い、多数のキャンセルが発生した。雇用に換算すると、3700人分の影響が出ている。
 すでに、解雇や自宅待機などが起きているが、ほとんどが労働組合がないところだ。雇用を守るため、労働組合の果たすべき役割は大きい。
 こうした観光客減少の危機に対して、連合沖縄としては、会議や集会などで可能な限り県内施設を利用するようにしている。また、連合中央や各単産中央に対しても、会議などを沖縄で開くよう要請した。県民運動としても、いくらか雰囲気はできつつあるのではないか。
 要するに、バブル崩壊後の長期不況があり、さらにテロ事件後の観光客減少が追い打ちをかけたわけだ。だが、それに第三弾の問題もある。
 1つは、特殊法人の沖縄金融公庫の廃止・民営化問題だ。これが行われれば、沖縄経済は壊滅的な打撃を受ける。県内にある沖縄銀行など3行は規模が小さく、とうてい金融公庫に代わり得ない。
 さらに、宮古・八重山など離島地域では畜産が主要産業の1つであり、BSE(牛海綿状脳症=狂牛病)の影響も大きい。
 経済問題の解決には、歴史的地理的にアジアとの関係が深い沖縄を、もっと「活用」し、アジア経済へのコミットを深めるべきだ。それこそ、日本経済再生の道だ。
 観光客減少を「風評被害」と評する声もあるが、その背景の米軍基地の問題を解決しない限り、問題は繰り返される。だから、経済回復のためにも、基地の整理・縮小は、連合としても取り組みを欠かせない。
 昨年は、海兵隊削減100万人署名と、県民投票5周年のシンポジウムを開催した。本年は沖縄の復帰30周年でもあり、さらに具体的な問題として、基地の整理・縮小と日米地位協定の改定に絞り込んで運動していきたい。