解説

自民・維新が「安保3文書」見直し提言 戦後安保政策の完全な転換を許すな

 自民党と日本維新の会が6月24日、高市首相に「安保3文書」の見直しに関する提言をそれぞれ提出した。

大転換もたらした2022年文書

 現行の「安保3文書」(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)は、2022年12月に岸田政権が策定した。特徴は、戦後の安全保障政策を大きく転換させるものであった。

 最大の特徴は、中国を「これまでにない最大の戦略的な挑戦」と位置づけ、朝鮮民主主義人民共和国、ロシアと合わせて、日本周辺の安全保障環境が「戦後最も厳しく複雑」との認識を示したことである。

 この認識に基づき、日米同盟を深化させ、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を明記し、戦後の「専守防衛」原則を事実上、踏み越えた。また、防衛費の国内総生産(GDP)比2%への倍増、防衛産業を国家事業として位置づけ、武器輸出ルールの見直し、「能動的サイバー防御」の導入検討を明記した。

軍事大国化狙う前倒し改定

 高市政権は、衰退する米国に代わって中国に対抗する役割を積極的に担い、アジアの政治軍事大国化を目指している。そのために、「安保3文書」を前倒しで見直そうとしている。

 すでに、政府の有識者会議(座長・佐々江賢一郎元駐米大使)は4月に3文書の検討を開始、政府は年内改定を目指している。自民党案と維新案はこれに向けた提言である。

 両案に共通するのは、人工知能(AI)やドローン(無人機)を活用した「新しい戦い方」への対応を求めていることだ。

 防衛費増額の目標については、自民案は具体的数値を盛り込んでいないものの、北大西洋条約機構(NATO)諸国の「2035年までにGDP比3・5%」などを例示し、「5年以内に防衛力の変革を成し遂げるべき」としている。維新案は「26年度の2%以上」を主張し、中長期的には「同志国の国際標準である3%以上を参考に増額を目指す」としている。軍拡路線で自・維は大差ない。

 非核三原則に関しては、自民案は「米国が提供する核抑止力を中心とした拡大抑止の信頼性を一層確保する」との表現にとどめ、高市首相らがもくろむ非核三原則の見直しには踏み込まなかった。対して、維新案は非核三原則の「現実的検討」を明記した。

 これと関連して原子力潜水艦の導入については、自民案は「次世代の動力の活用を含めて速やかに検討すべき」と記したが、曖昧さを含んでいる。維新案は「早急に原子力潜水艦を導入すべき」と、明記している。

 全体として、維新案は非核三原則の見直しを明記するなど、高市自民党でさえ世論に配慮した表現にせざるを得ない、戦後安全保障政策の清算を明言している。まさに、悪政の「アクセル役」だ。高市首相は「参考にする」と述べたと報じられているが、高市政権にとっては、維新案は誠にありがたい存在といえる。

世界の趨勢にますます逆行

 3文書改定は、いちだんの軍事費拡大をもたらし、わが国の政治軍事大国化を進める。それはグローバルサウスが台頭する世界で、その中心国である中国を敵視し、米世界戦略に奉仕してアジアの軍事的緊張を高め、日本を国際的孤立に導くものである。

 防衛省が有識者会議に提出した資料には、トランプ米政権が昨年12月に公表した「国家安全保障戦略(NSS)」において、同盟国に防衛負担増加を求めていることをわざわざ指摘している。米国を持ち出して予算増額を図るとは、売国性もきわまったというべきである。

 トランプ政権が示した「新たな世界基準」は、「GDPの3・5%を中核的軍事支出に、さらに1・5%を安全保障関連支出に充てることで、合計GDPの5%を達成する」というものだ。現行「安保3文書」は、軍事費のGDP比2%の目標を掲げるが、5%となれば33・8兆円にも達する。

 2026年度一般会計予算(総額約122兆3000億円)では、社会保障関係費が39兆559億円となっているが、トランプはこれと同水準を要求していることになる。実行されれば、国民には耐え難い負担増になる。さらなる増税と社会保障費削減などの、国民犠牲は避けがたい。

 一面的に抑止力を強化するのではなく。アジアと共生することこそ、わが国の平和と安全を守る道である。とくに、高市政権が敵視する、中国との平和外交を推し進めて戦争への道を阻止するため、政治家・有識者・労働組合・経済人・青年学生は共同で力を発揮しなければならない。(О)

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