陸海空自衛隊を一元的に指揮する常設の統合作戦司令部を設置することを盛り込んだ改定自衛隊法と、経済安全保障上の機密情報を扱う民間事業者らを身辺調査するセキュリティー・クリアランス(適性評価)制度の導入を柱とした重要経済安保情報保護法案が5月10日、参院本会議で自公与党と立民、維新などの賛成多数で可決、成立した。
これらは岸田政権が2022年12月に閣議決定した安保3文書を推進する立法措置であり、4月10日の日米首脳会談で岸田首相がバイデン米大統領に実行を約束したものでもある。
防衛省は統合作戦司令部を25年3月に新設するが、これはどういうものか。下の図は「日経」が示したイメージ図だが、「米インド太平洋軍司令官と連携」「指揮権の一部を在日米軍司令部に移す案」などという記述は「自衛隊は米軍の指揮下には入らない」(岸田首相)という建前に沿った説明に過ぎない。
先の日米首脳会談では、自衛隊と米軍を一体運用するための指揮統制の見直しで合意している。日米両国は、陸海空・宇宙・サイバー・電磁波など、あらゆる戦闘領域の情報を一元的に統合し、人工知能(AI)なども活用し、攻撃目標や攻撃手段を迅速に判断する指揮統制を目指しているとされる。一体化を進めているにもかかわらず自衛隊に独自の指揮系統があるなどという政府の言い分など成り立たない。
事実上、自衛隊を丸ごと米軍指揮下に置くことになれば、図にあるような「首相・防衛相」や「統合幕僚長」からの指揮系統は有名無実となる。つまり日本の政治も文民統制も飛び越えて、米軍が直接全自衛隊に武力行使を命じるという事態も予想される。極めて危険な体制が築かれようとしている。
また重要経済安保情報保護法は、米欧との軍事的な共同研究・開発を行うに当たって求められていた法整備で、特定秘密保護法の「経済版」というべきもの。国内軍需産業からも求められていたものだが、同法を根拠に恣意(しい)的に国民情報収集が強化され、監視・弾圧強化にもつながることも予想される。財界からも「(機密指定の基準が不明確で対象が広がる)懸念が全くないわけではない」(原・経団連国際経済本部長)などの懸念も示されている。
このような法案に、立民などの野党も賛成に回っている。日米同盟強化の方向で一致しているため、このような危険な法制化と闘うどころか推進している。戦争への道を阻止する国民運動が必要だ。