米大統領選挙が11月5日に投開票され、共和党のトランプ前大統領が勝利した。事前の世論調査に比して、早期に当選を決めた。
資本主義下の選挙は、そもそも、有権者の意思を正確に反映するものではない。その上、米大統領選挙は世界最大の「金権選挙」でもある。1年間にわたる長期の選挙選挙戦を闘い抜く最大の裏付けは「資金力」だからである。
米調査会社の試算によると、今回の大統領選・連邦議会議員選に注ぎ込まれた費用の合計はおよそ107億ドル(1兆6000億円)で、過去最高になるという。
また、相手候補・陣営への暴言やフェイクニュースなども空前の規模で飛び交った。トランプ氏を支持したマスク・テスラCEO(最高経営責任者)が「毎日抽せんで1人に100万ドル」といったキャンペーンを行ったが、さすがにこれは停止命令が下った。まさに「何でもあり」で、「民主主義」には程遠い選挙戦であった。
そうした状況下でトランプ氏は勝利した。そこには、米国の抱える深刻な危機が反映している。
トランプ勝利の大きな背景は、バイデン政権下、米国だけで100万人が死亡したコロナ禍とそれに続く物価高などで、国民生活が極度に悪化したことである。労働者の実質賃金は50年前と比べても減っているほど、貧困と「格差」が広がっている。
トランプ氏は「4年前と比べて生活はよくなったのか」と、バイデン政権の責任を追及した。2016年選挙の際に支持を得た、ラストベルト地帯の白人労働者だけでなく、こうした「現状否定」の言葉は、有権者を一定程度ひきつけたと考えられる。
民主党のサンダース上院議員は「米国民は怒り、変化を求めている。そして彼らは正しい」と述べた。留意すべき見解である。
トランプ氏は2017年以来の「返り咲き」となる。トランプ新政権は再び「自国第一」を掲げ、米国の世界支配を巻き返そうとあがくであろう。
だが、2016年当時と比べても、内外情勢は激変している。資本主義の危機はますます深い。コロナ禍、ウクライナ戦争、パレスチナ・ガザ虐殺を経て、中国・グローバルサウスが台頭し、米国は衰退と国際政治上での孤立を深めている。国内でも階級矛盾が強まり、港湾・教員・軍需産業などで労働者のストライキが前進している。移民や人工妊娠中絶問題が典型だが、社会的政治的分断はますます深刻で、米国社会は事実上の「内戦状態」にある。米国内の階級矛盾については、さらに研究を要しよう。とくに、労働運動と革命政党の発展に注目したい。
民主党はもちろん、勝利した共和党も何らかの変化を迫られる。
新たな自国第一主義は、世界の軍事的緊張、気候変動をめぐる国家間・国内対立、通商問題や先端技術をめぐる対立・分断などをいっそう深めずにはおかない。トランプ新政権の登場は、資本主義の危機の深まりの反映だが、その内外政治は危機をいちだんと加速・深刻化させよう。とくに「台湾問題」をはじめとする対中国関係は、曲折はあれ厳しさを増すことになる。
対米従属で米ドルに依存した、日本のあり方が深刻に問われる重大な情勢である。財界内にも、対米・対中関係をめぐり「自主的」な発言が目立つようになった。石破政権は総選挙大敗に続き、さらなる難題を抱えた。政局はさらに不安定化し、政治・政党再編が避けられない局面に入った。
トランプ新政権の登場は、独立・自主でアジアと共生する日本の進路の必要性を、ますます喫緊の課題とさせている。(宣伝局・K)