「戦略的互恵関係の包括的推進」再確認は大事
環境など日中共通の課題、協力して解決したい
若い世代は両国関係を良くしていけると期待
東京都日中友好協会(宇都宮徳一郎会長)では、学生部会が活動を始めている。日中友好協会は全国にあるが、学生が独自の活動を行っている例は多くはない。日中関係が厳しいなか、青年学生の間で友好運動を活性化させることの意義は深い。都日中学生部のメンバーに活動内容などについて聞いた。(文責・編集部)
ーー学生部会について紹介してください。
Aさん 学生部会は、東京都日中友好協会青年委員会の下部組織として、昨年8月から活動しています。目的は「学生を主体として、学術的な立場に基づき、中国の政治、経済、文化、教育などの中国事情及び日中関係に関する理解を深める場並びに忌憚(きたん)なく意見を共有し合える場を提供することによって、多角的な認識を促進すること」と定めています。
加入条件は、学生(大学院生を含む)であること、東京都日中友好協会青年委員会に加入していることのほか、満年齢は29歳以下としています。
日常的には読書会を中心に、ときには見学会のイベントなど、さまざまな企画を行っています。普段の生活で気になったことや社会問題について、意見を交わすこともあります。
ーー日中友好運動に関わるようになったきっかけは、どのようなことですか。
Aさん 学部生のときに中国語サークルに入っており、修士課程では中国の大学への留学経験があります。博士課程になって関係が薄れていたため、「中国と関係を持ち続けたい」と思っていました。
そのなかで都日中に出会い、両国関係をさらに考えるようになりました。たとえば、コロナ禍を機に入国規制が厳しくなっていますが、以前、比較的自由だった背景には、先輩方の粘り強い運動があったと知ったことがあります。
私は理系ということもあって、歴史についての勉強はまだ「これから」です。日中関係の歴史を学ぶと、「こんなことがあったのか」と驚くことが多いですね。
Bさん 大きく3つのきっかけがあります。
まず、大学に入って最初にできた友人が中国人留学生でした。自然な流れで「友人の国のことを知りたい」と思ったのが、第一のきっかけです。
2番目に、学部生のときにある訪中団に参加し、中国の人々から大歓迎を受けたことです。「恩は返さなければならない」と感じ、帰国後に都日中に入会しました。
第3に、日中関係が悪化するなかで、文化面から日中交流を進めて改善させたいと考えたことです。
Cさん 私は中国からの交換留学生です。私も3つの理由があります。
まず、近現代における日本思想史を研究していたことから、自然に日本に関心を持ち、友好運動に参加するようになりました。
また、盆踊りなど、日本の伝統文化にも関心があります。先日は、地域の夏祭りにも参加させてもらいました。
最後に、日本に来てみて、日中両国民が互いの歴史や文化に対して誤解していることが多いことに気づいたことです。具体的には、日本側では南京事件や慰安婦問題ですが、誤解を解いていくために微力を尽くしたいと思っています。
ーー最近の日中関係をどのように思いますか。
Aさん 最近発生した深圳市での刺殺事件や安全保障問題などは、政府間できちんと話し合ってほしいと思います。しかし問題は、メディアの偏った報道が誤った「中国観」を助長し、国民感情が悪化していることだと思います。先の事件に関しても、公平で冷静な報道がされているとはとても思えません。
それでも昨年来、両国政府が「戦略的互恵関係の包括的推進」を再確認したことは大事だと考えます。
Cさん 関係は緊張していると思いますが、貿易や観光などでの日中関係は非常に深いのに、政治との間の矛盾が大きいのが特徴だと思います。
Bさん 正直なところ、日中関係は良くない状況だと思います。
ただ、ほとんどの中国人留学生は、日本人学生と良い関係が築けていると思います。ですから、若い世代が両国関係を良くしていけるのではないかと期待しています。
ーー以降、友好運動にどのように関わっていきたいですか。
Cさん 日中が、互いの歴史を客観的にとらえられる場をつくりたいです。学生同士が顔を合わせる交流の機会は本当に重要だと思います。その中で誤解や偏見をなくせるよう努力していきたいです。
Aさん 自分の研究分野を生かして、日中両国の科学技術交流に貢献していきたいと思います。環境問題など、日中間には「共通の課題」がたくさんあり、協力して解決していけると思うからです。
併せて、中国に対する正しい認識を持ってもらうためにも、まず自分たちが学んでいきたいと思います。
Bさん 草の根交流、たとえば日中の「女子会」なども行って、一人の人間としての交流をつくっていきたいです。
Aさん この場を借りてですが、学生の独自の活動を支援してくれている、東京都日中友好協会に感謝を表したいと思います。
ーーありがとうございました。