高市首相による「存立危機事態」発言は、日本が米戦略に追随して台湾問題に軍事介入する意思を示したものである。発言は日中共同声明で正常化した日中関係の基礎を破壊し、両国関係は最悪ともいえる状況に陥っている。マスコミなどは台湾住民が高市発言や米日の中国敵視政策を「歓迎」しているかのように報じている。だが、平和統一と労働者階級の旗を掲げて台湾で闘う勢力は確かに存在する。編集部では、台湾のマルクス主義政党、労働党の呉栄元主席にインタビューを行った。

ーーまず、貴党について紹介して下さい。
台湾労働党は1989年3月29日に設立され、台湾地域で1987年の戒厳令解除後、綱領に社会主義の主張と「国家の完全統一推進」を明記した最初の政党である。また、台湾人口の大多数を占める勤労大衆の利益を代表する階級政党である。労働党は肉体労働者、頭脳労働者、社会に有用なサービスを提供する知識労働者、あらゆる精神的価値を創造する文化芸術労働者を含む労働大衆が現代労働者階級の構成要素であり、あらゆる公平と正義を支持する人々も労働党の団結対象であると考える。
労働党は、第2次世界大戦前、1920年代以降の日本帝国主義による植民地支配への抵抗運動、および1945年の台湾の中国復帰後の「新民主主義革命」を掲げた台湾人民左翼運動による反帝愛国主義の伝統を継承し、台湾人民革命運動第3期(注)の社会主義理想と国家平和統一の運動路線を、政治運動の二大綱領として提唱した。
これに対し、労働党は民族と階級の二重解放の追求を目標とする。労働党は現段階の台湾社会において、統一・独立論争が主要矛盾となり、労使対立が基本矛盾に属すると認識する。労働党は国家統一の促進が主要矛盾の解決経路であり、社会主義理想が基本矛盾の解決方向であると考える。
労働党の主要な活動内容は、統一・左派という二大綱領に基づく反資本主義・反帝国主義運動であり、米日帝国主義のアジアにおける共同支配と侵略に反対し、米国の台湾への武器売却と干渉に反対する。台湾独立による分裂に反対し、両岸(台湾と中国大陸)の平和的交流・和解・協力を促進する統一推進運動、そして弱者を助け強権に対抗し、労働者を支援して搾取に抵抗するなど、時代的な使命を持つ運動を展開する。労働党は、運動過程において団結面の拡大と組織力の向上を通じて、労働者階級が主要矛盾を解決する有力な階級となり、相応の発言権を獲得し、国家統一後の台湾社会における進歩的改革発展の主要な影響力となるべきだと考える。
労働党の主要メンバーは、創立期に1920年代の非武装抗日運動参加者である周合源(台湾文化協会中央委員)、陳其昌(台湾民眾党秘書長)、荘春火(台湾共産党中央委員)、廖清纏(台湾赤色救援会メンバー)、王紫玉(台湾文化協会中央委員)、伍金地(台湾農民組合参加者)らがいた。また、1945年から1970年にかけての政治的迫害を受けた人々も加わり、代表的な人物としては、1950年代に投獄された林書揚(台湾で最長の34年7カ月の服役歴を持つ政治犯、労働党名誉主席)、陳明忠(台湾最後の政治死刑囚)、1960年代に投獄された著名な作家・陳映真、1970年代の学生事件で起訴された呉栄元などがいる。さらに1970年代の『夏潮』雑誌や1980年代の新興社会運動、特に労働者運動に関わった多くの先輩たち。著名な人物としては、『夏潮』編集長の蘇慶黎、淡江民歌運動の要人である王津平、遠東化繊大ストライキを主導した羅美文、戒厳令解除後初の労働運動政治犯である顏坤泉、知識人による労働運動参加の代表格である汪立峽、台湾白色テロ史研究家の藍博洲などが挙げられる。
2009年末、「労働者は小さくとも団結は巨大」のスローガンの下、高偉凱が労働党を代表して党創立以来初の民意代表選挙で勝利を収めた。労働党は選挙運動路線を継続し、現在新竹県で県議会議員・羅美文(労働党前主席)が活動中であり、現主席は呉栄元である。

AIT(米国在台湾協会)のものではない!と訴える、台湾労働党と支援者
ーー高市首相による「存立危機事態」発言について、ご意見を聞かせて下さい。
日本の高市首相が国会で、台湾問題が日本の「存亡の危機事態」となる可能性があると公然と主張し、武力による台湾海峡介入を示唆したことに対し、我々は断固として反対と抗議を表明する。高市首相が「台湾有事」を口実に軍事戦略の高度化を推進するのは、台湾のためではなく、日本の右翼勢力が軍事力を拡大する口実に過ぎない。この露骨な中国内政干渉は、台湾人民の安全と生命を賭けにしており、台湾海峡及び地域の平和を深刻に脅かし、アジアの戦後秩序を破壊するものである。
特に2025年は、世界反ファシズム戦争勝利80周年、中国抗日戦争勝利及び台湾光復80周年、そして日本の降伏80周年に当たる。台湾は1945年に中国に復帰し、中国領土の一部となった。高市首相が「存立危機」を理由に台湾問題に干渉するのは、台湾復帰の歴史的・法的事実を無視し、戦後日本の降伏受諾時の約束を裏切る行為であり、その政治的立場が依然として帝国主義・軍国主義的思考に支配され、歴史の教訓を全くおそれず軽視していることを示している。台湾人民は日本統治時代の植民地支配を忘れておらず、こんにちの日本における右翼勢力の復活や、日本社会の軍事化を推進する動きがもたらす危険性を軽視することもない。
日本の台湾海峡問題への軍事介入は孤立した行為ではなく、米国主導の日米同盟戦略の一部である。米国が長年「台湾保護」の名目で武器売却を推進し、台湾を中国牽制の前線基地とする企図と連携する中、日本の右翼勢力は同戦略において軍事力を台湾海峡介入へ拡大し、日本を戦争可能・先制攻撃可能な国家へと変貌させようとしている。高市首相はこの発言で日本の保守右派ポピュリズム感情をあおり、一方で自身の政治的支持基盤を固め、他方で軍事費の大幅増額を推進し、日本の軍事産業財閥の経済的利益を肥大化させている。
さらに、台湾島内の独立分離勢力と外国干渉勢力が結託し、両岸対立をあおり、台湾市民を戦争リスクの最前線にさらしている。彼らは高市首相の発言を「支持・扇動」と解釈し、台湾の軍事化作業をさらに強化している。こうした行為は、米覇権主義、日本右翼、台湾独立勢力のいずれに起因するものであれ、台湾人民の安全を犠牲にし、地域の平和と安定を損なうだけである。我々は考えるーー台湾の安全と未来は中国の内政問題であり、外国の干渉を拒否し、台湾独立と米日覇権勢力の共謀、台湾民衆の生命の安全を犠牲にすることを拒否する。我々は国家の平和的統一の道を堅持する。したがって、我々は日本の反帝国主義・反戦を求める民間の声に対し、日本の戦後平和憲法を守り、平和を愛するアジアの人々と共に闘うよう呼びかける。