先日、沖縄県で米兵による女性への性的暴行、同未遂の事件が連続して起き、今、現地沖縄や日本各地で抗議集会や抗議デモが行われている。この機会に皆さんにぜひとも見ていただきたい映画作品がある。
戦後の沖縄民衆の闘いを描いた劇映画『沖縄』は、本土復帰3年前の1969年に製作、米軍統治下の沖縄現地でロケが行われた。第一部「一坪たりともわたすまい」、第二部「怒りの島」の3時間超の長編だが臨場感に引き込まれる。
舞台は1955年の沖縄。米軍は基地拡張や射撃場新設のため、沖縄民衆の先祖伝来の土地・家屋の〈強制接収〉を行い、主人公・島袋三郎が住む平川集落も対象で家財道具を荷車に積み、石ころだらけの山地へと追い立てられた。
たばこ1箱がB円(注)で10円の時代に、米軍は1坪当たり年間1円8銭というはした金で土地を取り上げた。そんな現実に三郎は「沖縄人の物を盗めば泥棒だが、アメリカーナの物を盗めば戦果だ」との人生哲学を身につける。
また「土地を守る会」のリーダー古堅と仲間たちは、銃を手に脅す米軍に非暴力で土地の返還運動をし、抵抗を続けている。
ある日、玉那覇朋子の祖母カマドが米軍機の機銃射撃を受け殺されるが、米軍からは補償はおろか謝罪さえない。葬儀の日、今は接収され〈立ち入り禁止の軍用地内〉にある先祖代々の墓へ、古堅を先頭に白い弔旗を立てた抗議の葬列が、銃を発砲し威嚇する米兵を振り切って前進する。カマドおばあの魂は皆の力で先祖の墓に埋葬される。
それから10年、平川村民は生きるため、米軍基地の補給廠(ほきゅうしょう=兵器工場)で働いている。補給廠の作業は息つく暇もない過酷な労働。全軍労分会長・知念は歯を食いしばって働く仲間を激励、労働者の団結に尽力する。
三郎は組合活動に関心が薄い。休日は恋人の朋子や幼なじみの清と、射撃場に忍び込み不発弾や空薬莢(やっきょう)を集めてスクラップ屋に売るなどして生活費を稼いでいる。
そんなある日、作業中に三郎の父親が足に大けが負い、働けないと補給廠管理官・ヤブから基地入構パスをはく奪され、「ひどい」と抗議をした同僚の新垣と亀野までパスを取り上げられてしまう。パスがないと基地内には入れずクビとなるため、家族を養えないと途方に暮れる二人。
分会長・知念は地区労事務所に組合員を集め、「組合本部は今回の件で厳重抗議と不当解雇撤回を申し入れた」と報告、組合中執も「情勢は急速に動いている。全軍労(現・全駐労)1万5千人と非組合員2万5千人が必ず立ち上がる日がくる。それまで、みんなの怒りを持続し広げよう」と訴えた。
三郎は、管理官・ヤブに「二人にパスを返してもらいたい」と頭を下げるが、ヤブは「協力してくれるなら」と返答する。「スパイならお断りだ」と一本気の三郎は一蹴する。
情勢は動き始める。全軍労本部中闘は、米軍司令官代理に「労働者の基本的権利の獲得と待遇改善」を要求し、交渉決裂のときは、「4万人の基地労働者が全員 割休暇闘争に突入する」と申し入れる。知念はこの指令を職場全員に満面の笑顔で伝える。三郎も皆と喜びを共有する。
班長の指示で三郎はヤブのいる監理官室に出向くと、そこにはパスを取り上げられた新垣と亀野が来ていた。ヤブは、三郎が二人の保証人になるならパスは今すぐ返すと言う。それは三郎がみんなのために活動しクビになれば、新垣、亀野も自動的にクビという、行動的な三郎を縛る〈手かせ足かせ〉で、ヤブの薄汚いやり口だ。
さらにヤブは、三郎・朋子・知念が「密貿易」する写真を見せ、「全軍労のストに反対し仲間を裏切れ。でなければ恋人・朋子と知念を逮捕させる」と脅す。
葛藤する三郎は「ストライキ反対」を表明し職場を離脱、数日後、農民支援の農作業に行くが、そこで面識のある全軍労幹部から「知念が職場で反米的破壊活動をした名目で逮捕された」と聞く。「ヤブにやられた」と職場復帰を決意する。米軍司令部は「ベトナム戦争遂行のため、基地機能を一日たりとも止めるな。全軍労のストを絶対につぶせ」と、すべての基地管理官に指令を出す。
ヤブは労働者を個別に呼び出しスト参加拒否宣誓書に署名を求めるが、職場の労働者は全員拒否した。
面接の際、ヤブは電話で「この職場以外は全員『宣誓書』に署名した」とのウソを話す。それを聞かされた労働者が動揺しだしたとき、三郎が皆に話を始める。「おれが逮捕され移動中、別室で縛られ強い照明で照らされ意識朦朧(もうろう)の知念が見えた。知念は『おれたちは、どんなことがあっても分裂してはだめだ。団結して闘えば勝てる』。これが知念からの言葉だ」と伝えた。団結を訴え続けた知念の思いを知り、みんなの気持ちがまた一つに固まった。
職場を出ると、銃を構えた米兵に「全員用意したトラックの荷台に乗れ」と強要され、他の場所に隔離された。全軍労中央や他の分会との連絡を遮断し、労働者を不安な気持ちにさせ、分断管理するためだ。
静寂の中、カーテン越しに朝日が漏れる。夜明けだ。ストライキ決行の朝5時が来た。
全軍労の宣伝カーから「朝5時よりストライキに突入した」のアナウンスが聞こえ、労働者・農民・市民のデモ隊が歌う「沖縄を返せ」の歌声が響き渡る。全軍労指導の下、基地労働者4万人がストライキに決起したのだ!
三郎たち労働者は軟禁された建物から飛び出すと、基地を取り囲むように幾重ものデモ隊列が「米軍基地撤去! アメリカは帰れ!B52撤去!」とコールし、ジグザグデモで訴えるのを目にした。胸が熱くなった三郎たち労働者は、銃を手に制止する米兵を振り払いデモ隊に合流する。
以上が映画作品の紹介だが、あくまで「幹」の部分のみで、その他の感動的な「枝・葉・花・実」は割愛したので、レンタルDVD店等を利用し、ぜひ感動を共有していただきたい。
敗戦後、日本から切り離され米軍占領下となった沖縄の歴史は、憲法もない中で、人間の権利を一つひとつ粘り強く闘いながら勝ち取ってきた歴史であり、それは今の沖縄の闘いと脈々とつながっている。(K)
注・B円 米軍が発行した円表示の軍票。1958年まで使用され、59年からはドルが使用された。