世界のできごと
欧州議会選挙で右派躍進、米外交にも影響
欧州連合(EU)加盟27カ国で実施された欧州議会(定数720)の選挙が6月9日までに投票を終えた。暫定結果で、中道主要会派が過半数を維持する一方、EUが推進する環境政策やウクライナ支援、移民政策に批判的な右派や極右政党が議席を増やした。対して、中道改革派や「緑グループ」が後退、「左派」は微増であった。
選挙は、各国が軒並みウクライナ支援や防衛費増額にかじを切り、また物価高騰の一方で国民生活向けの予算が圧迫されるなかで行われた。右派が、こうしたEU政策の批判票の最大の受け皿となった形。
極右政党が大勝したフランスでは、マクロン大統領が国民議会を解散すると明らかにするなど、選挙結果はすでに各国政治をさらに不安定化させている。米国が主導するウクライナ支援策や中国対抗策などにも打撃となる可能性がある。
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世界気温12カ月連続最高、先進国に大きな責任
「世界環境デー」を迎えた6月5日、EUの気象機関「コペルニクス気候変動サービス」は、今年5月の世界の月平均気温が過去の平均を摂氏1・52度上回り、過去最高だったと発表した。最高を更新するのは12カ月連続。5月の平均気温は15・91度で、産業革命前の平均を1・63度上回り、これまで最高だった2020年を0・19度上回った。
地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」では、世界の平均気温の上昇幅を1・5度に抑えることを目標にしているが、その達成は危うい。大きな責任を負っているのは、これまで主要に二酸化炭素を排出し続けてきた先進国で、とりわけ米国の責任は重い。
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ユニセフが「子どもの食の貧困」報告書、ガザは「重度の食の貧困」
国連児童基金(ユニセフ)は6月6日、「子どもの食と貧困」に関する報告書を発表した。イスラエルが侵攻するパレスチナ・ガザ地区では、「食料システムと保健医療体制が崩壊」し、「子どもの10人に9人」が「重度の食の貧困に陥っている」「子どもたちが致命的な栄養不良に陥る危険が迫っている」などとしている。
また、世界の子どもの4人に1人が「重度の食の貧困」にあるとし、その65%が、わずか20カ国に集中しているとしている。
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人民のたたかい
イスラエル軍は6月8日、ガザ地区を統治するハマスに拘束されていた4人を救出することを口実に作戦を始めた。ガザ保健当局は翌日、住民が274人死亡、698人が負傷したと発表した。この残虐行為に世界で批判が高まっている。
米国ワシントンのホワイトハウス前で6月8日、バイデン政権に対イスラエル軍事支援の中止を求めた。パレスチナ支援団体や女性平和団体コードピンクなどが組織した。
英国のロンドンでは6月8日、「パレスチナ連帯運動」が呼び掛けたデモ行進に数千人が集まった。英国では7月4日に総選挙が行われるが、参加者は「われわれの票が欲しいなら政治家は行動しなければならない」と訴え、イスラエルへの武器援助の停止を求めた。
南米アルゼンチンのブエノスアイレスで6月3日、女性への暴力に反対する「ニウナメノス(もう一人の女性も殺させない)」運動の9周年を記念するデモが行われた。この運動は、2015年に14歳の女性が交際男性に殺害された事件を機に女性らが全国で大規模デモを組織、フェミサイド(女性を標的とした殺人)反対や人工妊娠中絶合法化を掲げて毎年デモが行われてきた。この日のデモでは数千人の女性が、女性・ジェンダー・多様性省の解体など、女性犠牲の緊縮政策を強行するミレイ政権に怒りの声を上げた。
韓国の全国サムスン電子労働組合(NSEU)は6月7日、6・5%以上の賃上げと待遇改善を求め創業以来初のストライキに立ち上がった。NSEUは、サムスン全従業員の約4分の1を組織、半導体部門の従業員が多い。組合員はオフィス前で「労働者を無視するなら闘争だ」とシュプレヒコールを上げた。
日本のできごと
次期戦闘機の共同開発条約承認、本格的な「死の商人」国家に道
英国やイタリアと共同開発する次期戦闘機をめぐり、開発・生産と第三国への輸出を推進する政府間機関「GIGO」を設立する次期戦闘機共同開発条約が6月5日、参院本会議で自公与党や立民などの賛成で承認された。日英伊3カ国は、航空自衛隊のF2戦闘機、欧州4カ国のユーロファイター・タイフーンの後継機の2035年の配備を目指す。
岸田政権は3月に防衛装備移転三原則と運用指針を改定、次期戦闘機の第三国輸出を解禁した。今回の条約承認案には輸出促進が明記されているが、海外での紛争を助長しかねない。危険な転換にもかかわらず、チェック機能は極めて不十分。
本格的な「死の商人」国家への道を開くもので、対米従属下で「アジアの大国」を目指す亡国の道だ。
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改定子育て支援法成立、「負担なし」はごまかし
改定子ども・子育て支援法が6月5日、参院本会議で自公与党の賛成多数で可決・成立した。児童手当の拡充や全ての子育て世帯が保育を受けられる「こども誰でも通園制度」を創設するための財源の一部として公的医療保険料に上乗せ徴収する「支援金制度」を創設する。
岸田首相は財源について「実質的な負担は生じない」と繰り返してきたが、実質賃金目減りが続く労働者にも1人当たり最大月500円弱の保険料負担増を求めるとしており、「負担なし」は完全に破綻した。
厚労省は同日、1人の女性が生涯に産む子どもの推計人数を示す合計特殊出生率が2023年には1・20だったと発表した。年間出生数は72万7277人で、ともに8年連続減少し過去最少となるなど、減少のペースが加速化している。
上昇しない賃金と苦しい生活、ジェンダー不平等など、若者が将来への展望を描けない日本社会にしてきた歴代政権与党の責任は重い。
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陸自サイトに司令官「辞世の句」、沖縄戦を美化
那覇市に拠点を置く陸上自衛隊第15旅団が公式サイトの中で、沖縄戦を指揮した日本軍第32軍の牛島司令官の辞世の句を掲載していたことを、「琉球新報」が6月3日に報じた。多数の住民を巻き添え・犠牲にした沖縄戦を美化する許しがたい行為だが、県などの抗議を受けても陸自は修正にも謝罪にも応じていない。戦争において県民が犠牲になることもやむなしとしてする政府の本音を示すものだ。
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実質賃金25カ月連続減、2年以上の賃金目減りも国は放置
厚労省は6月5日、4月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)を発表した。実質賃金は、前年同月比0・7%減少した。減少率は前月から1・4ポイント縮小したが、マイナス自体は25カ月連続と、過去最長を更新した。名目賃金の伸びを物価上昇が上回る状況が続いているが、岸田政権は国民の生活苦にまともに向き合おうとしていない。
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