社説

わが国の完全独立と主権回復を目指し 日米地位協定抜本改定へ世論と運動を広げよう

 「米兵による少女暴行事件に対する抗議と再発防止を求める県民大会」実行委員会が2月6日に上京し、昨年12月末に開催した県民大会で採択した決議文と抗議声明を政府に手渡した。

 上京団は、この間、連続して発生した米兵による性的暴行事件の被害者への謝罪やケア、さらに日米地位協定の抜本改定などを政府に要請した。

 その後に行われた市民集会では、伊良波純子・同実行委共同代表らが口々に事件への怒りを表明、「私たちが求めているのは、当たり前の安心な暮らし」と訴えた。

 米軍人・軍属による事件・事故の根源は、言うまでもなく米軍基地が存在するからである。米軍基地の完全撤去抜きに、事件・事故を根絶することはできない。

 当面、日米地位協定の抜本改定を求めることが重要である。不平等で屈辱的な状況を改善することが求められる。

 わが党は改めて、沖縄県民の闘いへの支持と連帯を表明し、地位協定の抜本改定を求める。

世界に比しても不平等

 日米安保条約に基づき、日本には今なお130カ所もの米軍基地が置かれ、約5万5000人の米兵と軍属、その家族が駐留している。

 日米地位協定は、新安保条約(1960年)に基づいて締結され、米軍の施設・区域の使用や地位、艦船や米軍人などの出入・移動、刑事裁判権や民事請求権などについて定めている。その内容は、占領下の52年に締結された日米行政協定当時と、ほとんど変わっていない。

 日米地位協定は、米国が日本以外の国々と締結している協定に比しても、著しく不平等なものである。

 ドイツやイタリアなどの欧州諸国、さらにフィリピンでは米軍に国内法が適用され、飛行訓練時間や環境規制にも基本的に国内基準が適用される。事件・事故の発生時も、捜査権は当該国側にある。

 だが日米地位協定では、米軍基地の提供に際して場所や期限の定めがなく、使用目的・条件にも制限がない。「国権の最高機関」とされている国会でさえ関与できない。加えて、米軍にはさまざまな行政上の特権が与えられ、国民の生命や財産の侵害に対する補償どころか、調査さえほとんど行われない。

 女性への性暴力に象徴される事件・事故のみならず、米軍機の墜落や物資落下、低空飛行や夜間訓練による爆音、基地からの有機フッ素化合物(PFOS・PFOA)など汚染物質の排出、悪臭など、米軍が、沖縄をはじめ日本国民全体に甚大な損害を与え続けているのは、このためである。

 米軍はわが国、とくに基地の集中する沖縄で「勝手放題」を働いている。この異常で屈辱的な現実を放置してきたわが国歴代政府はまさに対米従属で、国民を守れぬだけでなく、主権国家としての権利すら放棄している。

「抜本改定」は当然の要求

 事件・事故が起きるたび、地位協定の「抜本見直し」が提起されてきた。とくに1995年の沖縄での少女暴行事件を機に、沖縄、全国で基地の整理・縮小と地位協定改定を求める運動が広がった。

 沖縄をはじめ米軍基地がある自治体も、これまでも地位協定の抜本改定を求めてきた。全国知事会も、2018年と20年に「米軍基地負担に関する提言」を公表、地位協定の抜本改定を求めている。

 だが、政府は米国と地位協定の改定交渉を一切行わず、「運用改善」と補足協定で対応すると繰り返してきた。

 実態はどうか。1997年に日米間で合意した事件発生の「速やかな通報」や、2004年に日米合同委員会で確認された、起訴前の身柄引き渡しへの「好意的配慮」さえ、ほとんど実行されていない。

 県民大会のきっかけとなった、性暴力事件の犯人である米兵は身柄勾留さえされていなかった。凶悪犯罪が発生したにもかかわらず、米軍は、以前は形式的とはいえ行っていた「外出禁止措置」さえとっていない。

 在日米軍司令部は、日本政府と住民を含む「フォーラム」をつくると表明したが、いまだ開催にさえ至っていない。不平等な地位協定をそのままにした新組織は、従来の「運用改善」同様、欺瞞(ぎまん)である。

 24年に摘発された沖縄県内での米軍構成員による刑法犯は73件・80人で、ともに過去20年間で最悪であった。不同意性交や強盗などの凶悪犯は8件で、1992年以降最多。

 沖縄では中国敵視の基地機能強化・拡大、パラシュート訓練の増加など「戦時」さながらの態勢がつくられている。これを許す状況が米軍を図に乗らせ、犯罪増加につながっているのである。

 実態は深刻で、もはや猶予はない。

 日米地位協定をせめて欧州並みの水準に抜本的に改定することは、米軍基地の存在に対する態度を問わず、ごく一握りの売国勢力を除く国民諸階層、政治勢力が合意できることであろう。

対米従属政治は継続困難

 こんにち、日米地位協定に代表される対米従属政治は、客観的には継続困難となった。

 第一に世界は激変し、日本を含むいわゆる先進国陣営は劣勢となり、グローバルサウスが主導的役割を果たすようになった。グローバルサウスはもちろん、欧州諸国も独自の歩みを強めている。

 なかでも、BRICSは11カ国に拡大、世界人口の4割強、世界の国内総生産(GDP)の約27%、財貿易と原油生産量の約40%を占め、加盟国はさらに拡大しつつある。米ドルに代わる独自決済システムの模索も始まっている。

 わが国の対米従属政治は、世界の趨勢(すうせい)に逆らい、ますます時代遅れのものとなった。

 第二に、帝国主義の筆頭である米国は衰退し、「米国第一」を掲げて中国への敵視と日本など同盟国の負担で危機を乗り切ろうとしている。第2期トランプ政権が登場、米戦略に基づく安全保障面の負担増加や戦争の危機に加え、日本製鉄のUSスチール買収問題のような投資や貿易をめぐる経済問題でも、日米間の矛盾激化は避けがたい。

 他方、中国市場は巨大で、科学技術面でも生成AI(人工知能)に見られるように著しい発展を遂げつつある。

 米国と中国双方に大きな利害関係を有する支配層、国家金融独占体にとって、ジレンマはますます深刻で存亡に関わるものとなっている。

 第三に、対米従属政治の下でのわが国の衰退である。少子高齢化、農林水産業の衰退、地方の荒廃、気候変動危機、資源・エネルギー危機、食料危機などが深刻化し、科学技術面でも立ち遅れている。

 第四に、対米従属政治の結果、生活苦を基礎とする国民の批判が増大していることである。長期の実質賃金低下、市場開放や規制緩和などによる国民経済の破壊と衰退などにより、大多数の国民が貧困化している。

 戦後の従属的日米関係は、継続がきわめて困難となった。国の進路をめぐり、政治闘争が激化せざるを得ない。

闘いを発展させる好機

 60年以上、一度も改定されなかった日米地位協定を改定させるのは容易ではない。米国の常識を「日本の常識」と考えるような、わが国支配層、売国政治家・官僚がこれを強力に阻んでいるからである。

 それでも、日米地位協定の抜本改定を求める世論と運動を全国で発展させる条件はある。

 すでに述べた卑劣な米軍犯罪や著しい主権侵害に国民の不満が高まりつつある。女性の人権、平和といのちを守ろうとする人びと、対米従属政治で犠牲にされ続けてきた農業者、自営業者も不満を募らせている。

 これを反映し、共同通信の調査によると、都道府県の7割に当たる33都道府県が、地位協定の改定が「必要」と回答している。

 沖縄で1月末に行われた第20回全国地方議員交流研修会では、約300人の超党派の地方議員の参加の下、日米両政府に日米地位協定の抜本的見直しを求める決議を全会一致で採択した。同実行委員会は2月6日、外務省・防衛省に同趣旨の要請を行った。

 石破首相も「対等の日米関係」「地位協定改定」を持論とし、これまでもたびたび言及してきた。

 だが、「新たな黄金時代」をうたった2月の日米首脳会談における共同声明では、日米地位協定どころか、米兵による犯罪の防止への言及すらなかった。

 それどころか共同声明では、南西地域での米軍の「プレゼンス(存在感)の向上」が明記された。

 沖縄県民、国民を苦しめている課題の解決には、程遠い。

 それでも、首相が「改定」に言及していることは、政府・与党、支配層内に矛盾があること、日本の政治情勢において当面の重要テーマにならざるを得ないことを示している。

 ゆえに、闘い方次第で支配層を割ることができ、幅広い政治的統一戦線をつくる上で有利である。国民の関心と意識、不満と怒りを顕在化させ、その発展を促進させる可能性があるのである。

 もちろん、その成否を決めるのは国民運動の力である。

 労働者・労働組合をはじめ農林漁民、心ある国会議員、地方議員・首長、知識人、女性、青年・学生などは、沖縄に連帯し、地位協定の抜本改定を求める行動を全国で巻き起こそう。

 女性、青年・学生の中で広がりつつある「沖縄連帯」の機運を発展させよう。国民運動の中核となるべき労働組合の役割は重要である。各自治体議会が、地位協定改定を求める決議を上げ、政府に意見書を突きつけることは重要である。地方議員は議会で、住民は議会外から働きかけよう。

 今こそ広範な戦線をつくって、日米地位協定の抜本改定を実現させよう。

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